第10話 天罰は下るものなり

「勘弁してよ…景子ちゃん…」


「昌充!今日中に10万持って来いって言っただろ!!」


ドスッ!!


「イッ!!!」


腹を、思いっきり蹴られた。


「ご!ごめんなさい!!1週間後には…何とかするから!!」


「1週間!?ふざけてんのかてめぇー!!三日だ。三日で持って来い!良いな!!」


「む!無理だよ!!1週間後なら、バイト代が…」


「うるせー!!」


バキッ!!今度は、脚と腕に喰らわせる。


「ふっふーん。今日はねー…、ちょー素敵なお仕置きを用意してるの♡」


「…………」


昌充は震えて、何も言えない状態にまで陥っていた。


「これ!読んで!!」


「は、はい!?」


「良いから!!読んで!!」


景子の手からぶら下げられた髪には、一言、カタカナが書いてあった。


「な、なに?これ…」


不安しかない、昌充。


「良いから!読まないと〇すよ?」


景子の声が、増々、どすの利いた声に変わった。


「い、妨害インペンディメンタ!!」


「はーい。よくできました!じゃあ、次は、私の番!」


スゥ―――っと息を吸うと、思いっきり、景子は呪文を唱えた。


蜂現アーペアパレシウム!!」


唱えた瞬間、いきなり空中に黒い輪が出来、中から蜂の大群がわんさか出て来た。


「あはははは!!!昌充!!あんたの顔パンパンにしてや…る…う…うぎゃ――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!」


「!!!!??????」


昌充はもう何が何やら解らない。


蜂は、縦横無尽に飛び交い、景子を襲うのに、自分の所には、一匹もよって来ない。


「いた―――――い!!嫌――――――――――!!助けて――――――!!」


あたりは、景子の悲鳴だけ。誰もいなくなった学校に、助けの手は差し伸べられることはない。


「何なのよ―――――!!約束がちがう―――――!!!キャ――――!!!!」


「は…ははは…ははははははは!!!」


昌充は、解放されたように、笑った。





「貴女が、してきたことが、解りましたか?景子さん」


「はぁ…はぁ…はぁ…」


景子は、体中、パンパンに膨れ上がり、見るも無残な姿だった。


「あんた…こんなことして…どうなるか…」


「どうなるのでしょう?わたしより、あたなの才が秀でているとも思えませんし、そもそも、あなたは【黒魔術師】ですらありません。わたしに復讐しようとしても、無駄ですよ」


しばらくして、蜂の大群が、渦の中に消え、そこに、【黒魔術師】が現れた。


「な…んで…解ったのよ…DVしてるのが…私の方だって…」


「そんなもの、手紙の文字から幾らでも感じ取れます。わたしは、【黒魔術師】なのですから」


「このこと…みんなに…バラして…」


「良いでしょう。出来るものなら、やってみるがいいでしょう。貴女がわたしに何かしてきたら…イエ、してくる前に、わたしはもう、あなたをこの世から抹殺することも可能なのですよ?」


「!!!」


「それが、怖くない、と言うのなら、どうぞ、おすきになさってください。あ!」


「な、何よ!!」


「昌充さんにも、今後一切、手は出さないように。もしも、貴女の行動によっては、抹殺するよりも辛い生き方をしていただくことになると思いますが…」


「…!!!」


景子は、悔しそうに、パンパンな顔で【黒魔術師】を睨みつけている。


「あ…あの…あ、ありがとう…ございました…。俺…実は、【黒魔術師】様に手紙書こうとも思ったんですけど…、こ…怖くて…」


そう言って、泣き出した昌充を、蜜羽は、優しく抱き締めた。


「よく、我慢しましたね。貴方はもう自由です。貴方のことは、わたしが必ずお守りします。これからもずっと。この景子と言う女には、何か悪事を働くと、先ほどのように、蜂の大群が襲ってくる術をかけました。もう、貴方が恐れることはありませんよ」


「ありがとう…ありがとう…うぅ…うぅ…」


怖かったのか、安心したのか、しばらく、昌充は泣きやなかった。



景子は、1週間入院し、その後、退学した。

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