ドラゴンの逆襲
ちゃむ
第1話
ボクは森の奥に住んでいるドラゴンです。ドラゴンはとっても強くて、怖い動物だとか言われてますけど、ボクにはそんな自覚はありません。強いかどうかなんて、そもそも力を振るう機会なんてないから分かんないです。
さて、今日も友達のクマさんとウサギさんが遊びに来ました。
「こんにちはー!」
「おう、今日も来たぞ」
「やあ!いらっしゃい」
ボクたちはいつも三匹で一緒に遊んでるんだ。
おいかけっこをしたり、おしゃべりをしたり、そのうちに眠たくなって、ボクの側に集まっておねんねするのもいつものこと。ボクも眠たくなってきたなぁ……。
「サンダーボルト!!」
突然人間の声が聞こえたかと思うと、ボクに巨大な雷が落ちて来た。
バリバリバリッ!!
痛い痛い!何!?何で!?ボク何かした!?
少し身体が痺れる中、周りを見てみると、ボクの大親友のクマさんとウサギさんが黒焦げになっていた。
恐る恐る触ってみても、全く動かない。
ピキッ……
……おい。これ、ブチギレて良いよな?ダメって言われてもブチギレるぞ!俺の大切な友達を奪いやがって!!おいゴラアアァ!!!
「フリーズアロー!!」
人間が何やら冷たい物を俺に投げつけてくる。どうやらこいつは俺を殺したいらしいが、俺だってお前を殺したい。
だが、多分こいつなら何やっても1回で死ぬだろう。だったらその1回に俺の怒りを全て籠める!!
とりあえず、人間の足を爪で引き裂いておいた。随分と柔らかかった。これでもう逃げられないぞ。後は全力で殺してやる。俺は人間を摘み上げ、目の前に持って来た。
「ファイアウェーブ!!」
いきなり目の前が真っ赤になった。これは炎か。普通なら熱さで苦しむんだろうが、今の俺にはただの暖かい風のように感じた。
……頑丈だな、俺。
さて、そろそろ全力で怒りをぶつける時だ。さっきから怒りのせいか、俺の体内からもの凄い力が溢れて来るんだ。
多分、アレだな。今まで一度もやったことないが、一発ぶちかましてやるか。
俺は大きく息を吸い込み始める。すると、体内で炎が点火し、一気に炎袋が膨れ上がり、炎で満たされるのを感じた。
だが、まだだ。俺の友達を奪われた怒りはこんなもんじゃない!!更に大きく吸った瞬間、喉元まで炎が溜まったのか、口から炎が溢れ出てくる。
少し熱いな……。だが我慢しろ!今こそ俺の怒りを解き放ち、このクソ野郎を殺す時だ!!
俺は口から全てを吐き出すように、全身全霊を込めて叫ぶようにブレスを放つ!!
ドッゴオオオオォォォォッ!!!
俺の視界全てが一瞬で炎に包まれる。俺の口からは極太の火炎ブレスが凄まじい勢いで絶えず放たれている。頭に受ける反動もなかなかのものだが、なんとか耐えていた。
あの人間はもう消し飛んだだろうが、そんなことはどうでもいい。今は俺の息が続く限り叫ばさせてもらう!
お前のせいで俺の大切な友達が死んだんだ!!ふざけんなああぁぁっ!!!
俺の怒りの声に応えるかのように、どんどんブレスの威力が増していく。自分でも制御出来ないくらいの怒りの力を、全てブレスに注ぎこむ!!
そして、ようやく限界が来たようだ。少しずつ、俺の体から力が抜けていき、やがて完全に止まった。
ふぅ、終わった……かな?なんか疲れたなぁ。
……ていうか、ボクやばくない?あんなやばいブレス撃てたんだ……。しかもいつもと口調も変わってた気がする。
……怒ってたせい、ってことにしとこ、うん。
それはともかく、ボクの大切な友達の命を奪ったやつに、全力で仕返ししたところで、友達は帰って来なかった……、そりゃそうだよね。ボクは神様じゃなくてドラゴンだもん……。
でも、これ以上あいつのせいで命が奪われることがなくなった、っていうポジティブな考えに切り替えていきたい。
……あれ、なんだか、涙が……。
ああ、どうしよう。涙が止まらない。次から次へと目から涙が出てくる。どんなに手で拭いても全然収まらないよぉ……。
あ、待って。今度は声が出そう。泣き声しか出ないけど。
あ、ああ……っ!ダメだ!全然収まらない!ボク、本当に悲しくなってきちゃったよ!うわーん!!ボクの大好きな友達返せえぇ!!!
その日ボクは、何時間も何時間も大声で泣いていた。
ドラゴンの逆襲 ちゃむ @BulkieCharge
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