睡眠中、夢のなかで社会に必要なインフラ……リソースを提供している世界。
睡眠は義務であり、夢のなかでさまざまな勉強を効率良くおさめ、睡眠こそ人が人らしく生きる為の最低限の資格。
……その睡眠がとれない人が被差別者として存在する。
彼らは乞食。
差別を受ける悲哀。睡眠という安らぎを得ることができない辛さ。
それが、人の愚かな行為とともに語られていきます。
今のところ、三章だてで、主人公はバトンタッチしていき、緩やかに話は繋がります。
一つ一つの話しは、非常にドラマチックです。
長すぎず引き締まった構成で、飽きずに最後まで読み進められますよ!
最後は、暗闇のなか、兄が妹を思いやる心に、
ぽっ。
と小さなオレンジの灯火を見るようです。
設定が素晴らしいの一言です。私では考えつかないです。
本作の舞台は、人間の夢を計算リソースとして社会インフラを構築した睡眠都市《ヒュプノポリス》。
その都市では眠ることのできない無眠者、通称『夢なし』は差別されてしまうため、無眠者であることを隠して生きている者もいます。
この有眠者と無眠者の関係性から生まれる物語が、繊細な心理描写で綴られています。
プロローグからその世界観が説明されていますが、凝った設定なのに分かりやすいのは高い文章力のためです。
主人公の状況や世界観がスッと頭に入り、しかも物語に引き込まれる最高の冒頭です。
独自の設定と文章力、そして人間の心理を浮き彫りにするどこか切ないストーリーは必見!