第42話 嫌だ!
「まさかこの時期のこの短期間でこれ程までに追い上げてくるなんて、油断してましたわ」
事務所に張り出されているグラフを見詰め、No,1の京華が差し迫る影に唇を噛みしめ脅威を抱いていた。
「暇な時期を逆手に取って水面下で勝負を仕掛けて来たんだろうね、指名数も新人の枠を超え今やトップに迫る勢いだし、売上も京華君にも間もなく並ぶね。全く凄い新人だよ」
「社長―――!! 」
「あぁ、いや、すまない。
「望むところですわ。今からでも引き離して見せます。
「明日でラストだね、ちか…… 締めはラストオーダーの24時までだっけ? 」
此処は新宿二丁目のL通り。通称「百合の小道」に有るビアンバー。二丁目がGayの街と云うイメージが強いかもしれないが、そんな事は無い。
あらゆる性的マイノリティに対応する店が多い場所と認識した方が良いだろう。その数500店以上。営業時間は店の形態により変化する為24h飲む店には困らない。その為キャバ嬢達の安全なアフター場所として多く利用されている。ゲイからは口説かれる心配は無いからだ。
ゲイbar,ビアンbar,ミックスbar,
更に
どのタイプと出会いたいかによって店のチョイスが変わるのだ。
一般的にノンケは
「うん、結構頑張ったよ。お姉ちゃんにも沢山お世話になっちゃったし、これでダメだったらもう諦めるよ」
「ダメだったらって、ダメだったらお店辞めるって事? 」
「うん…… 」
「―――!! 」
楓は意外な答えに言葉を失い、ジワリと瞳を潤ませた……
「ちか…… ちかが明日もしNo,1取ったら私達の契約も終わり? 」
「うん…… 」
「じゃあ一番取っても終わりだし、負けてもさよならなの? 」
「そう…… かも…… 」
「嫌だ――― 」
カウンターに両手を強く着くと楓は立ち上がる……
「嫌だ…… 嫌だ――― そんなのイヤっ!! 」
「お姉ちゃん―――⁉ 」
悲しみに暮れた楓はカウンターに涕を残すと、
そのまま外へと飛び出して行った。
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