第31話 捥ぎ取ってみせる

「はぁ~ 」


 私は深い溜息を付くとようやくレストルームを後にした。楓には先にパンツを持たせて出て貰い、お漏らし気味のツムツムは野に放ってやった。


 変だと思ってたんだ、髪はピンクだし、鞄にいつも付いてる小さな熊の縫いぐるみは、趣味丸出しの亀甲縛りをされてギッチギチで泡吹いてたからね。あれは真性マゾだよヱヴァ〇ゲリ〇ン様。


 丁度レストルームを出た所で年配の紳士と出合頭であいがしらにぶつかってしまった。「あぁ大丈夫? 」とその場を離れようとする紳士を引き留め、グロスが付いてしまっていないかだけ確認させて下さいと申し出た。

 

 高級そうなスーツの襟元に馬のバッヂを見つける。少し嬉しくなり「お馬さんお好きなんですか? 」と聞いてみると、「まぁねと」優しい笑みを浮かべ立ち去った。私はその立ち去る姿に少し違和感を覚えると、直ぐにマネージャを呼びよせた……


 仕事が出来るのか出来ないのか、いまだに良く分らないマネージャが用意してくれた物を持って先程の紳士を探す。


 此処は営業面積100坪以上、25mプールがすっぽり入る。キャストは常時出勤45名以上を誇る超大型店だ。最近改装を施され格付けが高級店へとなった。個室感を演出した高いBox席の背凭せもたれが視界をさえぎり、迷路を彷彿ほうふつさせ、一度見失うと中々見つける事が出来なくなる。


 まさにダンジョン高級キャバクラへと変貌を遂げた。


 楓は私の見える位置取りを圧力を掛けて付け回しにやらせている、スゲー権力…… 流石トップランカS級冒険者


 何故そんな広いダンジョンキャバクラを巡るのかって? それはより多くのお客様魔物達と視線を交差させる為。そう、一期一会幸運を拾うチャンスだからだ。


 出会いは一瞬、目の前を簡単に通り過ぎる。待っているだけでは奇跡は起きず必然では無いのだ。


 店舗の奥にダイブ潜入して行くうちに、ランカー上位ランクが多いように感じる。チラチラと男達の目線に腰をフリフリ躍らせながら、慣れないピンヒールが華やかさを奏でる。


 他の客に色目を使う行為は敵を増やすかもしれない。しかし私はあるデーターを考察しかんがみた結果、勝負するならこの時しかないと決定付けた。


 入閣を狙うならこの時期しかない……





 必ず№をぎ取って見せる。

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