第24話 夜は始まったばかり

「あはは、ちか久しぶりだねもう何年ぶりかな、L〇NE送っても全然返信ないからさ、新しい携帯教えてよ」


 変態仮面のL〇NEは完全無視してただけで、携帯は変わって無いんだけど、何となく雰囲気で感じとってほしかったが、やはり天然には無理だったか。


「最近匂いが薄くなってしまってね寝れないんだ、撮影にも影響するし新しいのを貰えないかと思ってね? 」


―――何の事よ……


「やっぱりお兄ちゃんは、ちかの脱ぎたて――――」


 パチーンと兄の頬に紅葉が出来た。途端に場内がざわつき部長が慌てて飛んでくる。


「どっ⁉ どうかされましたでしょうか⁉ 」


 続けてガシャンと奥のテーブルでグラスが賑やかにはじけ飛び、楓が鬼の形相で立ち上がる…… 色々と大騒ぎだ。マネージャを呼びつけこっちを指差し何かを叫んでいる。


 これはもうどうしようもない、面倒になるがバラすしかない。この場を納める為、実は兄妹なんですと説明する。諸々に決着が付き場内の騒ぎもひと段落した頃に、兄が語り出す。


 私のパンツのお蔭でオーディションに合格し芸能界入りを果たせた事。パンツを枕に被せて寝るとぐっすりと寝れる事。拒食症がパンツの匂いを嗅ぐと不思議と食欲が増した事。そんなくだらない事を熱量を込めて力説された。

 

 ―――変態の戯言。全く響かん……


「ねえ、何で此処が分ったの? 」


「あぁ母さんが教えてくれてね。大学辞めて六本木のキャバクラで働いてるって、店の名前までは分からなかったからネットで検索したんだよ」


「ネットで? 」


「うん、人気#ロリ系#キャバ嬢で検索したら、一発だったよ? あはははは」


―――はぁ……


「じゃあさ、パンツあげるからボトルとシャンパンね? お兄ちゃん売れっ子なんだからお金あるんでしょ? 」


「お金あるけど、僕は今、ちかが履いてるパンツじゃなきゃ嫌だよ? 出来ればお兄ちゃんの前で脱いで欲しいな」


「無理だから、絶対お兄ちゃん手ぇ出すもん」


「ははは馬鹿だなぁ、そんな事する訳ないだろ、僕達は兄妹なんだよ? 」

腰に手を回し力強く引き寄せる……


「見ないうちに、すっごく可愛くなったね。堪らないよ僕…… 」


「しっつれ~ しま~すぅ」

唐突にピンク頭乱入!!


「しつれいします。いちかさん、お願いします」

マネージャーに促され救われる……


「お兄ちゃん、もう帰って」


「嫌だ!! 帰らない!! 帰らないぞう」





 長い夜はまだ始まったばかり……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る