第36話 再起編(八)久遠
オミクロン株の急拡大によって雇用情勢の不透明感が増していくなか、追い打ちをかけるようにある出来事が
達也は考えを改めなければならなかった。就職活動は続けていたが実質的に就職は断念せざるを得なかった。時期が来れば年金が支給されるのでそれまで倹約する日々を送って
オミクロン株は変異を繰り返し、感染者数は減少しては増加し、増加しては減少する状況にあった。引き籠もり生活が長引くにつれ、達也の生活も徐々に
―人間の感情というものは、いつどう変わるのか分からないと思ったのはいつ頃のことだっただろうか―
達也は、自身の身の危険を感じていた。祖父と父親の死が未だに払拭出来ずにいたのである。祖父と父親が自殺したのは、今の達也と同じくらいの歳のことであった。
コロナ禍が落ち着いて、政府による規制が緩和されたある朝、達也は長い眠りから目覚めた。長らく不眠症に悩まされていたが、昨晩はよく眠れたようだ。昨日までの雨続きで、家の外はどんよりとした雲に覆われている。朝の情報番組の天気予報では、昼頃から晴れると言っている。達也は、久しぶりに大学図書館に行こうと思った。マーガリン入り葡萄パンと野菜ジュースで朝食を済ませると、支度をして駅の方角へと向かって行った。
梅雨が明けた。真夏の
(了)
(今回で最終話です。ありがとうございました)
参考文献
アナザー・チャイルド―社会から外れた子どもたち㉔
潮、平成三十年五月号掲載
血族の憂鬱 さかた けん @s2378t
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