第33話 地下での戦い7

「サト子、サト子」

 誰かが呼んでいる。


「サト子、サト子起きて」

 とても懐かしい声だ。


「サト子、もう朝よ。今日から学校に行けるでしょ?早く支度しなさい。」

サト子が目を覚ますと目の前には母親がいた。


「あれ?お母さん?」


「熱も下がったんだから今日から学校に行くって昨日言ってたじゃない?早く着替えてご飯食べなさい。」


 あ、そうか。昨日までずっと風邪で寝込んでたんだった。


 リビングに降りて行くとお母さんと弟がいた。


「ねぇちゃん大丈夫か?」


「うん。もう平気。」


 今日から学校かぁ……何か久々だな。………何か本当に久しぶり。

でも休んだのは一週間くらいだっけ?


「ほら早く食べて用意しなさい。」


「はぁーい。」


 学校の用意をすると家を出た。

 あれ、いつもミカと一緒に通学してるけど……今日はミカ、私がまだ休みだと思ってるのかな?

 スマホを見てみたが何の連絡も来ていなかった。

 まあ学校にいたら会えるからいっか。


 教室の前に着き、一呼吸置いた。

 ふぅ、何か久々の学校って緊張するよね。


ガラッとドアを開けるとクラスのみんなが私を見た。

「あ、おはよー…」みんな久しぶりだからびっくりしたのかな?


教室の隅にミカがいるのが見えた。


「あ!ミカおはよー!今日から久しぶりに……」

あれ?どうしてミカ、その子達といるの?


 ミカが一緒にいたのはクラスでも素行の悪いグループだった。その中でもリーダー格のリサと目が合って少しビクッとしてしまった。


 だけど私はリサよりももっと怖い目を見てしまった。

 え?ミカ?何でそんな目で私を見るの?






「サト子!」

サト子はニーナの声でハッと目が覚めた。


「…ニーナ?私……」


「サト子、しっかりして!」

サト子が見渡すと体中砂や小石まみれだった。

(そういえば私達、捕まってたんだっけ…?それで上から岩が落ちてきて……)


「あ!ニーナ!岩が落ちてくる!!」


「サト子、もう大丈夫だよ…」


 上を見てみるとさっきまであった岩がなくなっていた。


「……あれ?いったい何があったの?岩は?」


「私にもさっぱり……岩が落ちてきたと思ったら急に岩が空中で砕けたの。サト子はショックで失神してるし…」


「私失神してたの!?」


「うん。急に奇声を発したと思ったら泡吹いて…」


サト子は恥ずかしっと思った。


「でもいったい何が……」


「サト子さん!ニーナさん!無事ですか!?」

ノペルの声がした。


「ノペル!こっちは大丈夫!ノペルが岩を壊してくれたの?」


「いえ、僕ではありません!」


「じゃあいったい何が……」 


「それが…」 ノペルが何やら困ったような顔をしている。


「だから、オススメはしないって言っただろ?」


 そこに立っていたのは小屋の入り口にいたターバンを巻いた魔物だった。


「……え?ええ!?なんで!?」

 サト子は驚いてニーナに聞いた。

「…私もびっくり。」

 どうやらニーナもびっくりのようだ。


「理由は分かりませんが…助かったみたいですね…。」

ボロボロのノペルが溜め息を付きながら言った。


「え?マジでなんで!?あなた敵でしょ?!」

サト子がターバンの魔物に聞いた。


「敵?………まあ、味方ではないな。俺魔物だし。」


「……??」(訳がわからない。)


「レブ!!お前!何をやっている!?」コボルトが叫んでいた。

「お前!!裏切ったな!?」


「あぁ、悪いなコボルト!お前らのやり方が前から気に入らなかったんだ!」


「…この野郎…。一匹でフラフラしていたから仲間に入れてやったのに…」


「まあ俺らは気が合わなかったってことで!」そう言ってレブと呼ばれた魔物はテヘッて顔をした。


「ふざけやがって……てめぇら全員切り刻んでやる!!フローティ!!……あれ?」

コボルトが手を広げてわちゃわちゃしている。


「あれ?剣はどこだ?」

 

 ブスッ!!


「………え?」


 コボルトの腹から剣が抜き出てきた。

 

「ぐっ………はっ……。なぜ…お前まで…」

 コボルトが倒れると後ろには剣を持ったゼパードが立っていた。

 

「ゼパードさん……」


「…ノペル」



 ガジャンッと音がしてサト子達を囲っていた柵があがっていった。

「サト子、あの魔物柵まで上げてくれた。」


「そうみたいね。いったいどういうつもりなんだろう…」


柵のレバーを操作したレブと呼ばれた魔物がサト子達の前に降りてきた。


「よっ。」


「あなた、いったいどういつもりなの?もしかして罠??」


「罠?罠をかけるためにワザワザお前達を助けたってのか?」


「それならなんで…」


「……それは………、お前が旨そうだったからだ!!」


「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

レブがサト子を脅かしていると洞窟内に響くような大きい声がした。

 

「このクソ人間どもぉぉ!!」コボルトだ。


「…俺に…こんな真似をして…ただですむと思うなよ……。俺が死んでも…他の魔物がお前達人間を必ず駆逐するはずだ。……レブ!貴様も人間の味方をしていると同じ運命を辿るぞ!……貴様も聞いたはずだ…魔王様の言葉を…!」


「魔王!?やっぱり魔王は実在するの?」

サト子達にとって初めての魔王に関する情報だった。


「実在するのかだって?……お前達は呑気だなぁぁ。魔王様は……何年も前に急に現れ、我々に言葉を下さったのだ!」

コボルトは血を吐き、苦しそうにしながら叫んだ。


「魔王様はこう仰られた…『人間達を絶望させろ』と…ッ!」


「人間を……絶望させる??」

サト子は何か違和感を感じた。


「くっ……くく。いずれ分かるだろう…人間がでかい顔をして、生きていられるのも…もう……終わる…。」

 コボルトは息絶えた。


サト子達はしばらく呆然とコボルトの死体を見つめていたが、ふいにノペルが「…傷の手当てをしましょうか。」 と言ってフラフラになりながらサト子達の元へやって来たため、サト子は走ってノペルを抱き抱えた。


「ノペルが一番ボロボロでしょ?さあ、私は大丈夫だから。ニーナも足怪我してるの知ってるから早く手当てしよ!……ほら、あんたも手伝って!」そう言ってサト子はレブにも手伝わせた。


 レブは「なんで俺が……」とゴニョゴニョ文句を言っていたが渋々手伝っていた。

 

 

 

 

 

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顔面モンスターな私が異世界に行ってなんやかんやする話 D. @da1129

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