第32話 地下での戦い6

ノペルがコボルトに炎の魔法を食らわせよとした時、声が聞こえた。


「ノペル!!」

 ノペルが振り向くと入り口付近にサト子とニーナのオーラが見えた。


「サト子さん、ニーナさん!」


「しめた!!ゼパード!柵だ!」コボルトが叫ぶとゼパードが何やら壁に付いたレバーを下ろした。


 がシャンッ!!と大きな音がしてサト子とニーナの頭上から柵が落ちてきて二人は閉じ込められてしまった。


「きゃぁ!!なにこれ!?」


「サト子さん!ニーナさん!よくもっ!!」もう一度ノペルがコボルトに手を向けるとコボルトが言った。


「待て待て待て!俺が死ねばあの二人も死ぬぞ!」


「どういうことだ!?」


「お前は見えてないだろうがあの二人の頭上には大きな岩を魔法で浮かしている!貴様が俺を殺せば二人は岩の下敷きだぞ!クックック!」


「なんだと………。サト子さん!ニーナさん!大丈夫ですか?」


「こっちは大丈夫だけど……柵に囲まれて出られない!」


「頭上に岩はありますか?!」

サト子達が見上げると天井に大きな岩のような物が見えた。


「なにか大きい物があるっぽい!!」


「どれくらいですか?!」(炎の魔法で破壊できれば……)


「遠くてわからない!!」

「…暗くてわからない。」二人が一斉に答えた。


(だめだ曖昧すぎる………動いてなければ大きさや岩の場所がわからない!!)


「クックック!!見えないのが仇となったな!!さあ、どうする!?」


 (一か八かコボルトを倒した後すぐに落ちてくる岩を破壊するか……いや、一発で破壊できる岩じゃなかった場合二人が死んでしまう……!)


「…おい、貴様。わかっているだろうな?もし貴様が魔法を出す素振りをしてみろ?俺はすぐに岩を落としてやるぞ?」

そう言ってコボルトは先ほどの剣をまた浮かした。



「ノペル!!」

 サト子達は柵の中で出られる場所がないか探している。

「ニーナ!隙間かなんかない?」


「……だめ。でられない。」


 (だめだ。どうしたら……このままじゃノペルが私達のせいで……。)



「ぐわぁっ!」

 コボルトがノペルを剣で切った。


「ノペル!!」


 ノペルの腕に切り傷ができ、血が流れている。

「くっそ……」


「クックック、ハーハッハ!何てバカな人間どもだ!」コボルトが剣を投げ捨てた。


「これですぐ終わらすのはもったいない!」コボルトはノペルの顔面を殴り付けた。


「うっ……」


「ノペル!!もうやめて!」


「やめる訳……ないだろうが!」

 コボルトは更にノペルを蹴り、殴り付けた。

 ノペルは抵抗しない。


 (ノペル……ごめん。私達のために。ごめんなさい……。)


 しばらく暴行を受けた後ノペルは倒れた。


「はぁはぁ……。さて、このまま殺すのもいいが…チャンスをやろう。」

 コボルトが倒れたノペルの髪を持ち顔を上げさせた。ノペルの顔も体もすでにボロボロだ。


「お前が俺の家来になるならお前だけは救ってやる。わかるか?お前が俺の家来になるならお前は今、生き残れるんだ。」


「ぐっ……」ノペルはボロボロの体を起こした。


「お前も死にたくはないだろう?さっきは仲間を庇っていたみたいだが、結局は自分の命が大事だ。そうだろ?さあ、言ってみろ。俺の家来になると。」


「ノペル!!」サト子が叫んだ。


「私達は私達でなんとかしてみせる!ノペルは……今は生きる道を選んで!!」

 サト子がニーナを見るとニーナも力強く頷いている。

「ニーナごめん!二人でなんとか脱出しよう!きっと何かできる!」

「……わかった!」


「クックッ!いぃ仲間を持ったなぁぁ。さあこれで貴様も言いやすくなっただろう?さあ、一言家来になりますと言え!」 (結局は全員殺すがな…)


 ノペルが口を開いた。


「…ゼパードさん。柵を…上げてください……」

その場にいた全員がノペルを見た。


「……ゼパードさん、お願いします。二人を解放してください…」


「何を言ってるんだノペル…」ゼパードも震えながらノペルを見ている。


「ゼパード!!余計なことはするなよ?」コボルトがゼパードを睨んだ。


「ゼパードさん!!」ノペルが息を切らしながら続けた。


「あなたは……あの時何もしなかった。それをあなたは後悔してるんじゃないんですか……?いえ…僕の知ってるゼパードさんなら…後悔で胸がはち切れないばかりに苦しんでいるはずです!!」


 ゼパードの目から涙が流れた。


「ずっと…苦しんでいたのでしょう?……あなたはただ、生きたかった。でも、このまま苦しんで生きるのならば……今…過去を精算するべきです…ゼパードさん!!今しかないんです!!今!前へ進め!!」


「うるさいぞ貴様!!」コボルトがノペルを蹴り上げた。

「ぐっはっ……。ゼパード…さん、戦って…」


 ゼパードは涙を流しながら立ち尽くしていた。


 (………やはり、だめか。どちらにせよコボルトは全員殺すでしょう……もう一か八か掛けるしかない!!)


 ノペルはコボルトに向けて手をかざした。

「……コボルト!これが答えだ…!」


「なにっ!?」

 しかし……



「……?」


「魔法が…………出ない…!?」

 ノペルのかざした手からは何も出なかった。


(…しまった…もう魔法を使う体力が……ダメージをくらいすぎた…!)


「貴様ぁぁぁぁ!!やりやがったなぁぁ!俺を殺そうとしやがったぁ!終わりだぁぁぁぁぁ!」


 コボルトが浮遊魔法を解いた。


「岩よぉぉぉ!落ちろぉぉぉ!」


「サト子さん!ニーナさん!!」



 ドォォンッ!!!


 周囲に大きな音が響いた。

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