(ちょこっと短い話)電車の回数券、復活してほしいなあ。ICカード世代にわかる?

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 「電車の回数券が売られなくなってきて、困る!」切符世代の、ピンチ!「ICカードで、良くね?」違う。ICカード世代は、わかっていないよ。

 ああ、はいはい。

 俺、知っているけど?

 「交通系のICカードが普及しすぎたからとかっていう理由で、電車の回数券の販売が、中止になってきている」

 はい、はい。

 そのニュース、知っています。

 物心ついたときころから、ICカードを使って便利に生活してきた世代が、うらやましいを越えて、腹立たしくなってくるよ。

 あーあ…。

 電車の回数券、か。

 そこそこ、助かっていたんだけれどなあ。

 鉄道によっては、通信制の学校に通う生徒を大きく助けてきた「通学用の割引回数券」も、なくなるらしい。

 経済的に余裕のない生徒には、ホント、ピンチだよなあ。

 「電車の回数券?」

 「何、それ?」

 「ICカードで、充分、お得なんじゃないの?」

 痛いよ。

 そういう感覚は、痛すぎ。

 わかっていないよ。

 「ICカードがあれば、充分、お得」

 そう思えるのは、「毎日使う人」だからなんじゃないのか?

 通信制の学校とか、放送大学系に通う生徒は、毎日、学校に通うわけじゃない。

 基本、自習をしてレポートの提出などで、授業が進められる。

 だから、さ!

 そういう人には、困るんだよ。

 もちろん、通信の学校にいっているわけじゃない一般人にとっても、困る。

 「電車の回数券の販売、復活してくれないかなあ」

 となりに住んでいるミチコおばさんも、困っていた1人だ。

 「ねえ?」

 「何ですか、ミチコさん?」

 「あたしさあ」

 「はい」

 「この前に、電車の回数券がなくなっちゃうっていう話を、したわよね?」

 「ああ。はい、はい」

 「そこの、コンビニでね?」

 「はい」

 「困っちゃってさあ」

 「何か、あったんですか?ミチコさん?」

 「レジにいた子も、IC世代でね?」

 「はい」

 「そもそも、電車の回数券っていうものがあることすら知らなかった」

 「…でしょうね」

 「それって何すか、おばさん?って…言われちゃってさあ」

 「はい」

 「ムカッと、きた」

 「でしょうね」

 「電車に乗るのに、回数券なんかあるんですか?って、言われてね?」

 「回数券なんか…」

 「ホント、腹立ってきてね?」

 「はい」

 「あたし、その子の首を、しめちゃいました。口から、泡、吹いていた。あんたはカニですか!って、突っ込んでみました」

 「…うそ、ですよね?」

 俺、帰宅。

 「ピーポー、ピーポー」

 「ウー、ウー…!」

 近所が、騒がしい。

 パトカーの音とかが、響き渡る。

 …あれ?

 あれって、マジだったの?

 ミチコおばさんって、マジで、レジにいた子、殺しちゃったのかな?

 俺、知り合いっていうことで、たまに、裁判所に呼ばれたりして。

 困ったなあ…。

 裁判所にいくときの、電車の回数券、もう、販売しなくなっちゃうんだろ?

 回数券、か…。

 そうだ。

 今どき世代の命って、回数券みたいじゃないか?

 今どき世代って、既卒後、3年くらいは、新卒扱いなんだろ?

 期限内でなら、何回でも買って、やり直せるんだよな?

 それって、ほら。

 やっぱり、電車の回数券みたいじゃないかなあ。







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