思弱人
第7話 呪災 再
父さんがいなくなってから不思議な夢を見るようになった。
私はいつも線路で目を覚ます。目が覚めた瞬間に私は電車に轢かれる。リボンと血の滴がひらひらと舞う空間を私は落ちる。
次に目が覚めるのは華やかな祭りの中だ。真っ赤な提灯に、真っ赤なライト。赤く染まった夏の夜。でもそこには誰もいない。
私は何も見えなくなる。痛みもない。悲しみもない。後悔もない。なのにどうしてだろう。目を覚ますと大粒の涙が溢れ返っているのだ。
「ここは……。御巫さん……。どこ?」
休落山女児殺害事件。休落山にて付近の神社の神主 御巫俊典 の娘、御巫千草(14)が死体で発見された。付近には同級生である安堂ユリ(14)が意識不明の状態で発見された。
警察は以前の事件との関連性も含めて調査している。
「お前の責任じゃねえよ。村の上層部は縁起だの何だの言ってるがな。別れってのは突然なものだ。気に障ったならごめんな。」
「それは……。まあいいんだけど。……。あなたは誰?」
同じ病室で入院としている小太りな男がさっきからずっと私に話しかけてきているのだ。
「僕は綿貫智也。自分にはどこまでもネガティブだけど他人にはポジティブ押し付ける屑人間さ。」
「……。ポジティブね。それ、どんな感じだっけ?」
「え?」
「長老。畳方神社の娘。御巫千草が殺されたそうです。」
青年は老婆に話す。
「やはりな。そろそろお前も準備をしておけよ。」
「……。いいえ。それが、」
~数日前~
「それでは遅くまでありがとうございました。ひろあきさん。」
「いいえ。今日はありがとうございました。」
カエルの鳴き声が響く田んぼ道に一人の男が立っている。白の絵の具に黒い染みができたような異物感。
「よお。真犯人。」
白の仮面に黒いロングコート。杖をついて老人のようにヨボヨボと歩く青年の言葉にひろあきは眉を潜める。
「どういうことだ?」
「ハッ。よく言うぜ。」
青年は笑い飛ばす。
「君は誰だい?」
「紗菜屋甚平って言えばわかるかな?」
「紗菜屋……。まさか、」
二人の男の言い争う声と共に、銃声は雲ひとつない静かな夜空に鳴り響いた。澄んだ用水路は鮮血により朱色に染められていく。
「てめえにもう用はない。じゃあな。」
次に銃声が鳴り響いたとき、一人の男は命を落とした。
紗菜屋甚平。彼は安堂ユリの運命の歯車を大きく動かすことになる。
呪災少女の怪異探偵談 ポンコツ醤油 @ankomad
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