着物姿の女の子
また、ある日曜日、裏庭に行って、タイムトンネルのようなところに向かって、えいっ!って飛び込んでみた。
そしたら、昔の景色に変わった。
「いせっちー!行きますよー」
って、ちょっと遠くのほうから声してきた。
「はーい!」
って言って、目の前に、着物姿の女の子あらわれた。
ボクに向かって
「じゃあ、あやめっちー!お母さん呼んでるから、もう行くねー!バイバ~イ」
って言うと、ボクのほうに走ってきて
「あやめっちー!大好きー」
って言って、優しくギュッとボクのことを抱きしめた。
それから、タッタッタッタッて、遠くにいるお母さんらしき人のほうに向かって走って行った。
途中で、ボクのほうを振り返って
「あやめっちー!あやめっちも早く帰るんやでー」
って言って手をふって、また走って行った。
ボクは
「じゃあ、はよ帰るか」
って思って、今来たタイムトンネルみたいなところに向かって、えいっ!って飛び込んだ。
そしたら、また、もとの家に戻っていた。
その晩、寝ていたら、また、いつもみたいに優しくギュッと抱きしめられるのをやっぱり感じた。
でも、なんとなく
「さよなら~」
って女の子の声、聴こえてきたような気した。
ボクには、お姉ちゃんふたりいる。
中3のお姉ちゃんと、中1のお姉ちゃん。
朝ごはんを食べてる時に、着物姿の女の子と会った話をお姉ちゃんにしてみた。
「その女の子、お母さんに『いせっちー!』って呼ばれてたな~」
「えーっ?いせっちっていうんやー!その女の子」
って下のお姉ちゃん。
上のお姉ちゃんは
「いせっちって、もしかして、いせさんちゃうかな~?」
って言うから
「いせさんって?」
って聞いてみた。
「百人一首とかの伊勢さん!北高校の近くに、伊勢さんの暮らしていた庵あってな!今は伊勢寺になってるんやけどな...」
「へぇー!そっかぁ。もしかしたら、いせっちって伊勢さんなんかな~」
「さあな~、どうなんやろな~?」
いせっちと、あやめっち ヤッキムン @yakkimn
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