第30話
その別れから僅か
「
まだ蒼白な顔の涼悠は力なく白蓮の名を呼んだ。
「俺、死んで天に昇ったのか?」
「違う。ここはお前の部屋だ」
涼悠はすべての霊力を使って
「今は駄目だ。動くことも出来ないほど、お前は霊力を使ってしまった。私が分けてあげよう」
白蓮は仙術の一つ、房中術を施すために涼悠と唇を重ねた。涼悠は突然のことで驚いた様子だったが、急を要するため、拒まれてもやめるつもりはなかった。涼悠の口の中に舌を差し入れて、己の気を分け与えた。涼悠の身体に十分に気が満ちたことを確認すると、彼の唇から離れたが、涼悠が白蓮を抱き寄せ、その唇を重ねてきた。白蓮は彼の気が済むままに委ね、その求めに応じた。
房中術とは互いの気のやり取りを行い、気の循環を図るもので、それによって気を高め合い、養生と体力の強化に努めるものである。決して淫蕩に耽って快楽を追い求めることはせず、精(気)を漏らしてはならない。この時、涼悠には霊気が無いため、白蓮の気を一方的に分け与えるもので、涼悠は損なった気を貪るように求めたのだろうと思った。
白蓮がそこまで話すと、
「
と声をかけて、庵に
「ついに昇って来たのだな、
と
「お前、誰だよ。すごい派手だな」
涼悠が訝し気な顔をして言った。そんな無礼な態度に、役小角は僅かに口元を緩め、白蓮は眉を寄せて、
「はははっ、面白い。まさか
大らかに笑って、涼悠の言葉など全く気にも留めない様子だ。
「お前、俺のことを笑ったのか? 失礼だな」
涼悠が言うと、
「涼悠、お前こそ失礼だ。この方が
白蓮が涼悠を諫めて言った。
「ああ、こいつが
涼悠がにっこり笑ってそう言った。その素直で屈託のない笑顔は、見ている者の心を和やかにする。そんな涼悠を見て、
「
と言って、みんなが座っている板の間に上がり、その一角に座った。
「
と
「なに、なに」
と謙遜しながらも目を細めた。
「あなたが何も言わないでいるので、私から二人に話しましょう」
役小角はそう言って語り始めた。
そんな彼が昇天して
その時、
ようやく
まず、
下界へ落され人として
今の涼悠を見ていると、
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