2 異世界飲食業界

よお、俺の名前は木中又蔵。

「焼肉beast」っちゅう焼肉屋の店長をやってるモンだ。

それが異世界とどう関係があるかって?

俺の焼肉屋では異世界モンスターの肉を提供してんだこれが。

まあ、そう何種類も扱ってるわけじゃないが。

食品衛生上いろいろ大変だったのよ、全く。

牛が良くてオークはダメとか、蛇肉ならギリいいけどドラゴンはだめだとか、な。

お偉いさんがうるせぇうるせぇ。

ここで扱ってるのは「テラホーン」っちゅう角がたくさん生えたモンスターの肉と「ベビゴン」っちゅうドラゴンの赤ん坊の肉だな。

テラホーンは見た目が牛だからスムーズに審査通ったんだがよ

ドラゴンはキツくね?って思ったよな?

これがな、こいつまだ両手足がない状態、つまり見た目は蛇なんだよ。

だから蛇肉で申請出してやったよ。

そしたら許可おろしてくれてよ。


なんせ俺は異世界に行ける能力「コネクター」を持っている数少ない人間の1人。


だから、とぼければ手足のないドラゴンも蛇になるっちゅうことだ。

あ、もちろん衛生面はしっかりしてるし何しろ上手いんだ。そこんところ知っといてくれよな。

なにも違法なことはしてないぞ?

そんな俺の仕事を1日だけ紹介してやる。



以下、幻夏社のインタビュアーがお届けします。


—今日は何をしますか?


今日は異世界に行って肉の仕入れと新しいネタを探すつもりだ。


—仕入れと買い付けってやつですか。ドアを使って異世界に行くんですよね?


おー!良く知ってんな!なに、お前もコネクターなのかい?


—いえ、違います。紹介してくださった方に教えていただきました。


なんだ、まぁ知ってんなら話が早ぇ。

このドア使うぞ。

あ、あとこれ押してってくれ。


—荷台ですね。なにに使うんですか?


肉の運搬に使うんだよ、見りゃわかるだろ。


—ドアの向こうは牧場?ぽいですけど。


その通りだ。

すげぇだろ?

これ俺が買った異世界の牧場なんだよ。

産地直送ってやつ。


—異世界の人から買ったんですか?


うーん、そうはそうだがな…厳密には違う。

俺は向こうのやつの言葉わかんねぇし、そもそも通貨すら持ってねぇ。


—それなら一体どうやって?


知りてぇか?

どうしよっかなー。

うそうそ、冗談だよ、そんな分かりやすく落ち込むなってガハハ!

角青っちゅうとこの会社で働いてるネェちゃんに手伝ってもらったんだよ。

あそこの会社、コネクター用のサービスを展開しててありがてぇんだ。


—コネクターの中では良く利用されるんですか?


そうだな、他の業界がどうなのかわからねぇが使ってるやつは結構いるぞ。


—初めて知りました、貴重なお話ありがとうございます。ちなみに、この牧場にはどのようモンスターがいるんですか?


それは企業秘密ってやつだ。まぁ隠す以前に何体かは見えてると思うが。


—ええ、あそこにいるのがテラホーンですね。あの夥しい量の角を見ればすぐ分かりますね。ここにいるのは全て購入したのですか?


いや、俺が獲って繁殖させた。


—凄いですね、ご自分で?


あぁ、冒険者ギルドっちゅうところに行けば手伝ってくれる強ぇ兄ちゃん姉ちゃんがいっぱいいんぞ!ガタイもヤバいが魔法がすげぇ。ありゃ一見の価値ありだな。


—覚えておきます。それで肉の方は?


あー、まずはあの小屋だ。

あそこで契約した解体業社が屠殺から解体までしてくれてんだよ。

よし、ついてこい。




あ、そこ、糞落ちてるから気をつけろよ。


—うわ!そういうの先に教えていただきたいです。


ガハハ!

しっかり踏んだな!運がついたってやつだな。



あ、そうそう乳搾りやってくか?

副業で酪農もやってんだが。


—結構です。


そうか、まぁこれも絞ってる間に糞が飛び散るからな!お前さんには向いてないかもな!ガハハ!



—…このテーブルに置いてあるのが仕入用のお肉ですか?凄い量の肉ですね。


そうそう。

この大量にある肉はテラボーンの胸肉だな。

これはタンパク質がめちゃくちゃ含まれてるから筋トレにもってこいだ!

そいでこっちのちょっとしかないのがザブトン。いわゆる尻の肉だな。

あとで食ってけ。


—良いんですか?ありがとうございます。又蔵さんが1番美味しいと思う部位はどこですか?


そうだな、ルドルフゴブリンのタンだな。


—ご、ゴブリンのタンですか?


気味悪いだろ??

俺も最初はそう思ったんだがよお、食べてみたら仰天!腰抜かしちまったよ。

ただ引っこ抜くのが大変で、血が止まんねぇんだよな。


—そ、そうですか、次の質問いいですか?


なんだよ、あからさまに顔引き攣ってんなぁガハハ!


—…仕入れはコレで終わりですか?


おん。

このデケェ包を荷台に乗せて運ぶんだ。


—なるほど。コレで終わりですか?


仕入れはな。

新しい肉探しをする。


—と言いますと、冒険に出かける的な?


いや、そんな大変なことはしねぇよ。

さっきも言ったろ?冒険者ギルドに頼んであるんだ。

そろそろかな。


—あれはなんですか?荷台に乗せられて巨大なモンスターが運ばれてきました。


「ジャイアントディアー」を討伐してもらったんだ。

あれを解体して食ってみる。


—その場でですか?


おう。


(以下、グロテスクなシーンが含まれましたので割愛させていただきます)


うおお!うめえぞこれ!!ジビエだよこりゃ!

ほれ、お前も食ってみろ。


—な、生ですか?!…結構です。今日の異世界でやることはコレで終わりですか?


あぁ、とりあえずこの肉も保健所に持ってって店で出せるか交渉だな。


—今回はありがとうございました。


お!ちょっと待て!



ほら、焼肉食ってけよ。

テラボーンのカルビとプチゴンのハツだ。

(とても良い匂いと煙を充満させながら焼いてくれました)


—美味しいですね!特にこのハツは噛めば噛むほど繊維の間から肉汁が溢れ出します!


そうだろ?これめちゃくちゃ美味しいんだよ!

カルビは?どう?


—カルビも今まで食べたことがないくらい美味しいです!舌の上で脂がぶしゃぶしゃ吹き出ます!…ただこれは脂すごすぎて好きな人選びそうですね。


おお、よく分かってんじゃねぇか。

事実、向こうのやつらは脂が嫌いらしくてよ、売り物にならねぇみたいだ。勿体ねぇ。

脂好きにはたまらねぇ一品だな。


—ちなみにゴブリンのタンはどんな感じなんですか?


歯応えがやばい。

あと鉄臭い。

あと


—…結構です。今回はありがとうございました。


おう!また来いよ!


—ありがとうございます。ちなみに他のコネクターの方を紹介していただけたりできますか?


他のコネクターかぁ…まぁ一人いることはいる。教えても良いんだが、あいつにインタビューするのは難しいと思うぞ。

まぁ一応これ、はい。そいつの名刺ね。

俺の店によく来る観光業界のやつなんだけどよ、話が長ぇんだわ。

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異世界お仕事インタビュー タナカ @reek-2023

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