第3章 訃報



 

 季節は大寒を迎え、冬もはや大詰めとなった2月1日金曜日の朝のこと。

 最後の追い込みをかけるような厳しい寒波が、吹雪の音とともに学舎の中まで伝わって来た。


 2校時目の算数の授業を受けていた6年2組の児童たちは、担任の先生が急に職員室へ消えて行ったのを良しとして時々私語を交えながらタブレット端末に配布された練習問題をそれぞれ解いていた。


 それからしばらくしたところで、静かな廊下に先生の戻ってくる足音が響き渡った。


 6年2組の担任を務める磯川実いそかわみのるは一昨年広島にある大学の教育学部を出たあと、この深ヶ丘小学校に赴任してきたばかりの若手教師だ。

 教師としての技能はまだ未熟な部分があるが児童たちからの人気という点においてはその辺のベテランの教師も及ばないほど抜群のものがあった。


 まだ20代と言う若さもありちょっとした言葉の端々や所作なんかには若者らしいセンスが感じられ、他の教師たちよりもずっと親しみやすかったし、元から熱血な気質があるぶん悩み事や困り事には正面から真剣に向き合ってくれる。

 

 時には気軽に話せる相手として時には頼りになる大人として、児童たちは磯川のことを好意的に捉えていた。


 だがその『あまり怒らない面白い先生』であるはずの磯川としては珍しく、声のトーンを低くしながら固い顔で「桐谷、ちょっといいか」と開けられた教室ドアの向こうから有希の名を呼んだ。


 先生が戻って来たことで児童たちは再び課題に集中し教室内は静まり返っていたため、険しさのある磯川の声が悪目立ちする。


 驚きと不安の表情と共に顔をあげ、「はい」と強張った声で有希は返事をした。


 教室の前側の出入り口で磯川が小さく手招きをしている。

 それに吸い寄せられるようにその元へ有希は向かった。


 有希が廊下へ出て行ったあと、6年2組の教室内は俄かにざわめき出す。


「有希どうしちゃったんだろ。1人だけ呼び出されるなんて」


「いそっち『マジ』の時の顔だったよね」


 いつも明るく活発で児童会にも参加するクラスのリーダー的存在の有希に似つかわしくない事態に、有希と仲のいい女子達やお調子者の男子たちがヒソヒソとあれこれ憶測を交わした。


 ◆


 教室の1番左側の席に座っていた優也は、目を丸くしながら教室から出ていく有希を眺めていた。


 優也の右斜め前に座る1人の男子児童が優也の方を振り向きながら言う。


「おい優也、お前の幼馴染呼ばれてったぞ。なんかやらかしたのか?」


「いや、俺はなんも知らないけど……」


「怒られるんじゃね、あの雰囲気は」


 事情はよくわからないがそうなのかな、と優也は思った。

 先生が怒る時のパターンの1つだ。

 クラス全体を叱るときは教壇に立って怒りの感情を滲ませながら説教の言葉を投げかけるし、誰か1人や少人数を叱るときは関係者をそっと廊下に呼びだし問い詰めるように説教する。

 時には怒鳴り声が響き渡ることもある。


 有希も廊下に呼び出されたって事は、つまりそう言う事なんじゃないか。


「まぁでもアイツああ見えて意外とやんちゃだし。なんかやらかしてても、そこまで驚きはしないな」


「本当かよ」


 一体なんのことで怒られるんだろうかと、優也は耳を澄ます。

 だがいつまで経っても磯川の怒りの声が響いてくる事はなかった。


 ◆

 

 廊下に出た有希は恐る恐る磯川を見上げる。

 今の先生はきっと怒れる大人の顔に違いない。


 でもどして私が――?


「えっと、私なにか……」


「ん? ああすまない。別に怒るわけじゃなんだ」


 怒られるものだと思いこみ不安そうにしている有希に気づいたのか磯川は苦笑した。


「でも大事な話だから落ち着いて聞いてほしい。さっきお家の人から、桐谷のお婆さんが亡くなったって言う連絡があってな。それで葬儀の準備で忙しくなりそうだから桐谷も帰ってきなさいとの事だ」


「……え?」


 寝耳に水だった。

 全く想像にもしていなかった先生の言葉に、有希の思考は停止した。


「亡くなったって……どう言うことですか?」


 磯川は困ったような表情を浮かべる。


「詳しい事は先生じゃあ分からない。でもお家の人がそう言ってるんだから今日はもう早退しなさい」


 まだ話を飲み込みきれずに呆気にとられていた有希だったが、やがて「分かりました」と小さく返事をした。


 教室に戻り自分の机へ向かうと無言で荷物をまとめる。

 クラス中の視線が自分に集まるのが分かった。


 その時近くの女子が声を潜めながら「どうしたの?」と聞いてきたが、先ほどの先生の言葉で頭がいっぱいでそれに構う余裕はなかった。

 防寒着を身につけて赤いランドセルを背負うと「うん、ちょっと」とだけ言い残し教室を後にした。







 おばあちゃんが亡くなった。

 そう先生が言っていたのは間違いない。

 それで葬儀の支度があるから帰るように、と。


 誰かが亡くなればお葬式をする――。

 そんなことは常識として知っていたし時々クラスの子達が葬儀への参列を理由に学校を早退したり欠席したりするのを見かける。


 でもそれがいざ自分の身に起こるとまるで現実味がない。

 ずっと自分とは無縁の、どこか遠い世界での出来事のように思っていた。


 それにしてもどっちのお婆ちゃんなんだろうかと、有希は急に不安になった。


 隣の川崎に住むお婆ちゃんか、それとも名古屋のお婆ちゃんか。

 もちろんどちらであっても悲しいことに変わりはない。

 でも川崎の『美智みちおばあちゃん』だったらショックはより大きいかもしれない……。


 ◆


 ずっと以前から将来的に芸能界に入ることを有希は夢見ていた。

 特に女優という職業に対する憧れは強い。


 初めてそれを意識し始めたのは小学校低学年のころだ。

 華やかなテレビの世界でプリンセスのようにキラキラと輝く彼女たちに心が惹かれた。


 時にはバラエティ番組やドラマで、時には映画で、時には舞台でいつどこであろうとスポットライトの中心を欲しいがままにする彼女らの姿はどんなものよりも美しく映り、いつか自身の憧れとなっていた。


 それが女優という仕事の輝かしい一面を切り取ったものに過ぎないと言う事は理解している。

 ネットの使い方を覚えた頃からそこに転がる女優に関する様々な情報を積極的に収集してきたのだから。


 まずそのスタート地点に立つことが並大抵のことではない。


 女優デビューを飾るためのルートは多くあり中には一般公募の映画オーディションに合格した事をきっかけにその道への切符を手にするなどと言う稀有な例も存在するものの、基本的にはその前段階としてどこかしらの芸能事務所に所属する必要がある。


 そして、その方法は主に2つ。


 1つは各芸能事務所が主催するオーディションに受かる方法。

 もう1つは芸能事務所のスカウトマンやマネージャーからスカウトを受ける方法。


 しかし、芸能関係者からのスカウトを期待するのは現実的ではない。


 日々何十万、下手したら何百万人と街を行き交う人々の中から自分1人にだけ特別な目を向けられる確率などとても低く、大抵の人は一度もそんな経験を得ることなく人生を終える。


 その一方事務所が主催するオーディションであれば、競争率の点から考えてまだ可能性がある。


 マイナーなものからメジャーなものまでそれこそ数えきれないほどのオーディションが毎年開催されていて、その応募者はオーディションの知名度や規模によってばらつきがあるものの、少なければ数百人~数千人、多ければ数万人~10万人ぐらい。


 審査内容はどこも大抵共通して書類による一次審査、面接・実技による二次審査の構成で、オーディションの規模が大きければそれに加えて三次審査、四次審査と続く場合もある。


 そしてその中からグランプリ、場合によっては準グランプリや特別賞などに選ばれた極少数だけが合格を勝ち取る。


 オーディションの中には一次審査の合格率が50パーセント近くに達しその後の審査に進みやすいもの、グランプリは獲れなくとも特別賞が多く用意されていて結果的に芸能事務所所属への競争率が低めとなるものも存在する。


 そうした中から自分の手にも届きそうな道筋を模索することで、多少なりとも現実的な希望を見出せるような気がした。


 とは言えオーディションを勝ち抜き一般人から今をときめく女優へと変貌を遂げた女性達の来歴をひとたび探ってみれば、学生時代はモテエピソードに事欠ない美少女として地元で有名であったり、かつては読者モデルとしてファッション誌の誌面で人気を博していたりと、やはり元からしてただの素人の枠に収まっているような器ではないケースがほとんどだ。


 だからずっと以前から有希は、小学生ながらに何が自分の強みなのかと真剣に考えていた。


 女優を目指すのであれば、容姿は優れていたほうがいいに決まってる。

 いやそれどころか必須級の項目だ。


 決して顔立ちに自信がないわけではない。

 自身の美醜感覚やこれまで周囲の人たちから寄せられてきた言葉、恋愛を意識し始めた男子達の視線や言動。

 それらから判断して顔はそれなりに可愛い部類に入ると思っていた。


 スタイルも悪い方ではない。

 身長はずっと平均を超えて成長しているし、無駄な骨の角張りや余分な肉付きのない母譲りのスマートな体型は密かな自慢だ。


 でも『飛び抜けている』とまでは言えない。


 もっと可愛い子なんて学年で10人はいるし、自分よりもずっと身長が高く線も細くてそのままモデルになれんじゃないの? と思うような子もこの学校だけで何人も見かける。

 

 結局容姿はそれなりに良い程度で、それだけで人生を切り開いていけるほどの実力がある訳ではない。


 メイクやファッションで多少の伸び代はあるかもしれないものの、容姿の原型はそう簡単には変えられない。

 なら他に努力で伸ばせそうな物は何か――そこで小学生らしく有希は勉強に目を向けてみる。


 勉強の成績自体は自分の将来の夢とはほとんど関係がないけれど、もしそれを1つの特技としてみたら?

 限界まで突き詰めればやがて大きなアピールポイントとなるはずだ。


 でも……『それはないな』と早々に有希は見切りをつける。

 成績うんぬん以前に頭の出来がそもそもあまり良い方ではないと心得ていた。


 きちんと授業を聞いて宿題をしてその上週2回の塾に通っていても、テストの点数は平均かそれよりも少し上程度。


 授業中にうとうとしているのにテストでは満点を取ったり、初めて解く問題であってもスラスラと回答を黒板に導き出したりするような子達を見ていると、この分野では良くて凡人なのだと実感させられる。

 

 そこで思いついたのが『ダンス』だ。


 小さい頃からテレビ番組やネットの動画のダンスシーンなどを見ながら、それを真似たり自分で考えたダンスを踊ってみたりするのが好きで、それなりに様になっているのか周囲から上手いと褒められる事があった。

 ダンスをする上で欠かせない運動神経の良さにも自信がある。

 だからきちんと取り組めば、これなら高いレベルまで伸ばせるような気がした。


 そう言った思いもあり4年生の頃から、渋谷にある某大手レコード会社が運営するダンススクールのキッズコースへ有希は通い始めた。


 週に2度、1回につき60分間のレッスン。

 スクールまでは少し距離があるため移動は電車か両親の車で行う。

 往復にかかる時間は1時間ほど。

 スクールにかける費用や時間的な負担は決して少なくはないものの、これまで通り塾にも通い勉強を疎かにしないと言う約束のもと両親からそれを許された。


 しかし新たにダンスの習い事を始めたいと言う希望を、母が好意的に受け入れてくれたのに対して父は難色に近い感情を示した。


 そこに父と母の教育方針の違いがある事を有希は理解している。


 難関で知られる国立大学を出ている父は、それが関係しているのか昔から教育熱心な性格であり、有希にも自身と同じように勉強一本の道を歩ませようとしていた。

 幼い頃の小学校受験に始まり名門塾への入塾、中学受験の勧めなど事あるごとに一人娘をどうにかエリートの軌道に乗せようと苦心していたようだ。


 だがそれに有希が順応することはなかった。

 小学校受験は父から言わせれば『大失敗』の結果に終わったし、塾は運良く入塾テストをパスするもその後の指導について行けず1度辞めてまた別の塾に入り直す羽目になる。

 中学受験なんて自分の学力ではハードルが高過ぎてとてもじゃないが目指せたものではない。


 母もかつてはそんな父に乗り気な時期もあったが年々増えていく我が子の勉強方面での躓きを目の当たりにして目が覚めたのか、いつしか親としての希望は脇に置いて子供の夢を積極的に応援する方向へと教育の舵を切った。


 しかしそれが度々、父と母の夫婦喧嘩や対立を招いたようだった。

 

 そう言った時の有希は自分の考えに理解を示してくれる母の肩を持ちたくなる。

 だけれど、かと言って父の方針を間違いだと否定したい訳でもない。


 勉強が大切だと言うのはその通りに違いない。

 勉強を頑張っていい学校に行っていい仕事に就いて高い給料を貰う――そうすれば最終的に満たされた人生を送れる可能性が高くなる。


 子供の頃の成績の良し悪しが大人になってからのステータスを左右しがちな事を、まだ社会を知らない子供なりに何となく察していたし、そう考えれば勉強はできた方がいい。


 でも自分が進みたい道に、より必要となるのは勉強ではなくダンスの方だ。

 だから本当は勉強をする時間を犠牲にしてでももっとダンスの練習に専念したい。


 父と母が自分のことで言い争うのを見ていると胸が苦しくなるし、本当にこの夢を手放しで追いかけていいのかと不安にもなった――。


 ◆


 そんな時に有希の心に安らぎを与えたのが神奈川県川崎市に住む美智である。


 今でこそ世田谷の一軒家で家族3人で有希は生活を送るが、生まれてから小学校に上がるまでの間は、父大貴だいきの生家にて美智と一緒に暮らしていた。


 その頃は大貴に加え有希の母絵美えみも正社員として忙しく働いており、帰宅が夜遅くになる事も珍しくはなかった。 

 そんな息子夫婦に代わり何かと有希の面倒を美智は見ていた。


 少しずつ人間関係を築き始める大切な時期に側にいてくれた美智に有希は親しみを覚えたし、美智のほうも有希が生まれる前の年にその因果関係は不明だが愛煙家の夫を肺がんで亡くし常々寂しい思いをしていた為、新しい家族が増えた事を喜び多くの愛情を有希に注いだ。


 やがて有希の両親が家を建てた事により美智の家を出て東京の世田谷に引っ越すが、距離が近い事が幸いし年末年始やお盆、長期休暇以外の時にも休みの日などを利用してよく美智のところにまで有希は遊びに行っていた。


 ◆


 優しくて面白くて一緒にいるだけで楽しい気分になれる人――祖母の事を有希はそう評価していた。


 昔の話をよく祖母は語ってくれた。

 自分が小学生や中学生の時に流行っていた歌や遊び、恋愛の思い出、それに初めて家族を持った時の嬉しさや苦労話なんかを沢山教えてくれた。


 ハイテクノロジーの時代を生きる有希にとってレトロ感のある祖母の青春時代の話はまるでアンティークでも眺めているかのような新鮮さがあり、聞いているだけでどこかお伽話の世界に引きこまれるような不思議で楽しい気持ちになった。


 また、話の面白さだけではなく他の大人たちのように説教がましく自分の考えを押し付けたりはしないその優しい性格にも惹かれた。

 青っぽい子供の意見であっても無碍に否定したりはせず尊重してくれたし、何か間違っている時は怒るのではなくアドバイスと言う形で正しい道筋を教えてくれた。


 祖母と話をしている間は現実世界の嫌な事を忘れられ、いつしか祖母の隣は有希にとってストレスからの逃避先となっていた。


 何か辛い事や嫌な事、逃げ出したい事があった時はよく祖母の元に駆け込んだものだった。







「早ければもう明日にはお通夜でしょ? それまでにこの子の礼服も準備しとかなきゃ。制服のある学校だったらこんな時は楽だったのにって思っちゃうのよね」


 そんな母の言葉をぼーっとした気分で有希は聞いていた。


(美智おばあちゃん……どうして)


 嫌な予感は的中だった。

 特に大好きだった祖母を亡くしたショックは想像以上に大きかった。


 その時、先ほどまで祖母の身元確認の為に川崎の警察署へ出向いていた父が少し難しそうな顔で言った。


「もしかしたら結構後になる可能性もあるな。これから始まる警察の検視がどうなるかまだ分からないから」


「そうなの? でも検視って言ったって事件に巻き込まれた訳じゃないならすぐじゃない?」


「その辺は警察の判断を待つしかないよ。さっき弟に電話した時に聞いたんだが早いと半日、遅ければ数週間以上かかるらしい」


「そうなんだ。とりあえず有希の礼服は別にきちんとした物じゃなくても大丈夫よね?」


「あぁ、確か黒いワンピースぐらいで大丈夫だったはず。まだ小学生だし」


 その後母に連れられて有希は近所の衣料品店へ向かった。

 数年前にアウトドアの趣味を持つ父の希望で購入した大型のSUVの助手席の上で揺られながら、その道の途中「どうして、おばあちゃん死んじゃったの?」と車を運転する母に元気のない声で有希は尋ねた。


 母が言葉に詰まるのが分かった。


「それは、まだ警察の人たちが調べている途中だから。それよりいきなりの事でショックでしょ? 今はなにも考えなくてもいいのよ」


「うん……」


 家を出て5分ほどで行きつけの衣料品店へ到着する。

 いつもなら何を見ようかなと少し浮かれた気持ちになるのに、こんなにも暗い気分で店の自動ドアを潜るのは初めてかもしれない。


 それから生地の厚い冬用の黒いワンピースを1着購入し店を出た。

 その帰りに近くのファストフード店でハンバーガーのセットを3人分テイクアウトで母が注文していたが、全く有希は食欲がわかなかった。


 その後、沈んだ気分で有希は時間を過ごした。


 父と母の会話を断片的に聞く限り、祖母の遺体は警察の検視に回されているらしい。

 誰かが自宅で孤独死した時などは、その死因を調べる為にそれが必要なようだ。

 それが終わるまでは書類の手続きや葬儀の執り行いなどが出来ないらしく、その間に父と母は関係者への連絡を済ませたり葬儀会社を選びに出かけたりしていた。


 時間が経過するに連れて少しずつ有希も平常心を取り戻していき、祖母の死を受け入れる心の準備を整えていった。


 ◆


 祖母の死の報せから2日後の日曜日にようやく祖母の遺体が警察から戻り、その翌日の月曜日にお通夜、翌々日の火曜日に葬儀・告別式が執り行われた。


 途中、祖母の遺体と対面する機会に恵まれたが、やはり有希は涙が止まらなくなった。

 思い返せば最後に会ったのは冬休みの時。

 「風邪に気をつけるのよ、またね」そう言って見送ってくれた祖母の最後の姿が脳裏に焼き付いて離れなかった。


 前はあんなに元気だったのにどうして――色々な感情が渦巻く中ずっとその疑問が頭の中を駆け巡っていたが何故か両親や親戚の人たちはその話になると言葉を濁した。


 祖母の遺体が戻ってくるまでの間何度か警察に父が呼び出されていた事も合わさり、祖母の死についてどこか不穏なものを有希は感じていた。

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