治水という世代を跨ぐ程の大事業においては、人ひとりの労苦が埋火の明かり程の仄かなものである事、そしてまた同時に、血肉の通った人々の偉業の積み重ねである事、その両面が、伊奈忠次の人生の軌跡を提示することでひたひたと訴えかけてきます。さらに古典の静的な名句をダイナミックな帰結に繋げているのはとても鮮やか。始まりをいくつ数えたかその先で、あっと驚くひらめきと、清々しい感動に出会うはずです。意外な飯テロにもご注意を。
伊奈忠次を扱った短編。数話の中編かと思いきや一話完結。だがそれが良い。