1話

武士は食わねど高楊枝。父の口癖だった。


先日とうとう長年の極貧生活がたたったのか、父は突然に息を引き取った。


痩我慢をして必要な栄養すら取らずに俺に与えていたのだ。そうなってしまうのも無理はなかった。


「これからどうしろってんだよ…。」


母は物心つく頃よりも前に亡くなり、父もまた後を追った。


唯一生きていた肉親を失ったことで、俺は天涯孤独の身となった。


今年16になるが、己くらいの歳で一人で生きていけるほどの処世術を身に着けているものなど稀だろう。唯一残されたのは危篤に陥る前に渡された遺言が書かれてあるという一封の書簡のみで、明日の食い扶持にすら困る始末だ。


働き口に宛がないわけでもないが、こんな状況でそんなことを考える気分にはなれなかった。


「はぁ…。それにしても腹減ったな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サムライ・クルセイド べっ紅飴 @nyaru_hotepu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る