独り言

 間に合わなかった。見えていたのに、私の必死のアピールも虚しく時間通りにバスは出発してしまった。

 次のバスは一時間後だ。毎日使っている路線なので、時刻表を確認するまでもない。

「遅刻確定だわ……」

「残念だったなぁ」

「誰のせいよ」

 家を出るのが遅れた元凶を睨みつけるが、当の本人はけらけらと笑うだけで反省の色など欠片もない。私を揶揄って遊んでいるのだ。

「背に乗せてやろうか」

「お断りよ!」

「一限の単位とやらは良いのか?」

 それを言われると弱い。実際、次遅刻したら出席が足りないところまで来ているが、ここで頼るのは相手の思う壺なので無視して待つことにする。

 明日こそは、この男の妨害を振り切ってやる。絶対、絶対にだ。

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300字小説 紅崎雪乃 @yukino_kouzaki

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