300字小説

紅崎雪乃

お嬢様へ

 さらりと流れる黒い髪、スカートのプリーツにはシワひとつなく、すれ違う生徒に向ける微笑みは見る者を虜にする。通学はお抱え運転手の送迎で、買い物は店側が家に来る。幼稚舎の頃から許嫁がいるらしい。

 彼女は絵に描いたような良家のお嬢様だ。無論、足元も抜かりはない。磨き上げられた靴はハイブランドの物で、履き古した姉のお下がりとは全然違った。どうしてこんな高嶺の花が我が校にいるのかが最大の謎である。


 今日も彼女は完璧だった。しかし、私の見間違いでなければ、彼女の足首あたりに肌色の何かが貼ってある。じっと目を凝らして、そして気付く。


 あれ、絆創膏では?


 どこで覚えたの? 靴擦れ対策なら靴下の内側ですよ!

 モブ生徒より。

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