第66話 未知が怒らない!?
(みんなにいうの忘れた。未知と付き合うって)
「何でもないよ。お風呂はいろ」
おれは未知との約束をすっかり忘れてしまっていた。
他の女性陣達に未知と付き合うからあなたたちとは
関係を持てないってことを。
シルさんと出会ったことで完全にそのことを忘れてしまった。
でもシルさんとも付き合えそうな雰囲気がある。
未知にみんなには未知と付き合うって伝えたから
安心してといいながらシルさんと密会することはできない。
だからみんなに伝えなくてよかったのかもしれない、
という都合のいい結論に達する。
また考えるという深みにはまり始めた。
そして気付いたら眠りについて次の日の朝を迎えた。
「お兄ちゃん、おきなさ~い」
じんのが陽気に起こしに来る。
おれは何時まで起きていたのだろうか。
身体が重い、頭がぼーっとする。体調も悪い。
なによりも今日、未知に会うことがおっくうだ。
「ごめん、おにいちゃんちょっとしんどい...」
「昨日からしんどそうだったもんね。
学校休む?」
その手があったか。学校を休むという。
でも先延ばしにしか過ぎない。
でもいきたくない。
「わたしが電話しようか?学校」
「いいよ。自分でするから」
そう言ってまんまと学校を休んでしまった。
もちろん時間差で
くるみ、杏子先生から心配LINが届く?
あかねちゃんはどこで俺の休みを仕入れたのか
休み時間に電話をかけてきた。
もちろん出なかったが。そのあとLINも届いたので
時間をおいてから返信をしておいた。
そして未知からも「大丈夫?」の一言だけ届いた。
これに対する返信には相当悩む。
言い訳がましい長文を打っては消しての繰り返し。
最終的には2時間後に『うん』の一言だけ。
これが後々、大きく俺を助けてくれる。
2時間も返信に悩んだ甲斐があったというものだ。
もう夜だ。一日中横になりながら考え込んでしまった。
「おにいちゃん、晩ご飯作ったよ。食べれる?」
部屋の扉の外からじんのの声が聞こえる。
あれ?いつもなら部屋に入ってくるのに
なんで部屋の外から声を掛けるのだろうか。
病人だから気を遣っているのかな?
「うん。ありがとう。食べるよ」
扉が開く。
「えっ!」
扉の向こうにはくるみも立っていた。
「くるみちゃんが来てくれておかゆ作ってくれたよ」
じんのはニコニコしている。
「じょうくん、体調はどう?」
「ありがと。大丈夫。明日は学校行ける感じだよ」
そりゃそうだ。恋の悩みで2日も学校を休むわけにはいかない。
「よかった。昨日の途中からほんと顔色が悪かったから心配だったんだ」
「おかゆもありがとね。いつも助けてくれてありがとう」
「わたし、おかゆ作りに来ただけだからこのあとじんのちゃんと遊んだら帰るね」
なんていい子なんだ。くるみは。
なんてけなげなんだ。くるみは。
2人の間に割って入りそうなくるみの存在。
それでも頭を振って、まずは未知とシルさんの2人だと言い聞かせる。
次の日の放課後......
部室に入るとそこにいたのは未知だけだった
「大丈夫?」
心配そうに声を掛けてきた。
「うん。大丈夫」
俺はこの2日間考え続けたが答えが出ていない。
未知との約束も果たせていない。
「くるみさんに聞いたけどVSJから体調悪かったって」
「うん。途中から悪くなって」
「昨日も一日中寝込んでたんだよね」
「うん。でも何で知ってるの?」
「昼休みにくるみさんとたまたま会ったから聞いて」
「なるほど。でももう大丈夫だよ」
「ほんと?昨日もLINの返信も遅かったし、返事も一言だけだったから
私も大分心配しちゃった」
「ごめん。寝てたから」
「いいのいいの。じょうくん、この約束したことって体調悪かったから話せてないよね?」
「ごめん、はなせてないんだ」
「いいよ。無理して話さなくて。私も無理言っちゃったから。
じょうくんの気持ちが私にあればそれでいいの」
おれは心の中でホッとした。
未知は未知で俺のことが心配だったんだ。
俺のことも好きだから俺のことが気になって仕方なかったんだ。
だから体調が悪い、学校休んだ、返事が遅い、その内容が淡泊、
これだけで未知はおれに対して優しくなっていた。
俺は約束が果たせなかったことに未知から下手をすると
もう付き合うことは無いってフラれるかと思っていた。
「他の4人には必ず近いうちに言うつもりだから。
俺にはその4人に気が無いから」
そういうと普段クールな未知が一気に顔を崩して笑顔になる。
本人もライバルに対して自分が選ばれるのか相当気になっていたようだ。
こんな未知に俺はうそをつくことができなかった。
「でも、シルさんに会った......」
「えっ」
もちろん未知も知っている。シルさんの存在と
俺がくるみと別れた理由もシルさんのことが好きだったからということも。
「未知のことは好きだ。でもシルさんのことも頭から離れなくて」
おれは未知に嫌われても仕方ないと思った。
うそをついてまで未知と関係を持つことは俺自身が望まないし、
未知に対しても失礼だとそんな結論に達していた。
そんな未知からまさかの答えが返ってくる。
「それって私がシルさんと肩を並べたってことね。うれしい」
(うれしい!?)
「えっ?」
「だってくるみさんと別れてまで追っかけたシルさんと悩んでくれてるんでしょ?
それってすごい好きってことだよね?」
「うん。それは間違いない。でもどちらかを選ばなきゃって思っているし
ちゃんとしたいとも思っている」
「他の4人と違ってたとえシルさんでも、やっぱり二股はいや。
それにわたしも振り回されるのもう限界」
「ごめん。俺がはっきりしないから」
「そうだよ。ほんとにそう。だから終わりにしよ」
「え!?おわり!」
まさかの突然のノーサイド宣言。
「うん。次で最後」
「次?」
「私かシルさんか選んで。シルさんを諦めて私を選んでくれるなら
今度の日曜日、23時に私の家に来て。お姉ちゃんいないから。
......そして私を抱いて......」
…………………………………………
あとがき
いよいよ大詰めです!
ぜひどうなるのかお楽しみに。
新作を今日から投稿しました☆
こちらもぜひお読みください。
スタートダッシュを経験してみたいので
ここまでお読みの読者のみなさん、
新作も応援よろしくお願いしまーす♪
「匂いを嗅がせたい『まりさん』と
匂いを嗅いだら気を失う『ぼく』」
https://kakuyomu.jp/works/16817330657062922934/episodes/16817330658134394808
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