匂いを嗅がせたい『まりさん』と匂いを嗅いだら気を失う『ぼく』
Rui ji 6
第1話 まりさんの匂いで僕は気絶した
ここは【男1:女9】の世界だ。
手取り、足取り、腰取りと
かわいい先輩達がいい香りをさせながら
僕にダンスの指導をしてくれる。
かわいい女の子ばかり。
香ばしいその香り、
芳しいその香り、
艶めかしいその香り、
ここは女の園だ!
くんくん、くんくん、くんくん。
はぁ~、もうたまらない!
田舎育ちの僕にはすべてが新鮮だった。
『えっ!イチローくん、わたし、におうの?』
現役アイドルのまりさんが僕の肩と腰に手を添えながら不安そうに聞いてきた。
(やばい!まりさんの匂いを嗅いでるのバレた!)
僕はダンスでかいたはずの汗が
一気に冷や汗へと変わった。
「い、いや………しないはずで、す」
女性の扱いを知らない僕はドギマギしてしまう。
「本当に!?......ちょっと真剣にかいでっ!」
この年代の女子は自分の匂いに敏感なのか
それとも僕のことを全く男として見ていないのか………
まりさんは匂いを嗅げと言わんばかりに
汗が滴るその首筋を僕に近づけてきた。
「えっ!?」
ぼくは身動き一つ取れないやしない。
「におってたら本当に教えてね」
まりさんはその色っぽい首筋を僕の鼻に近づける。
ポニーテールに結んだ髪の毛。
首筋に滴る汗。
クリッとした大きな瞳
プリッとした可愛い唇。
マスカラがなくても長いまつ毛。
ごくりっ、僕は大きくつばを飲み込む。
ああ、いい香りしかしない。
これは香水なのか、シャンプーなのか、
とろけそうなほどいい香りがする。
まりさんの首筋が僕に近づいてくる。
これがフェロモンというやつか......
汗の匂いがまざるとより興奮する......
これが都会か......
これが大人の女性か......
正直もう、クラクラ......します......
「やっぱりにおうのね!」
僕がクラクラしているのを見てまりさんは焦った顔をしている。
「い、いや、ち、違います……」
「じゃあ、ちゃんとにおって!」
まりさんが首筋を僕に押しつけてくる。
(あぁ、そんなに近づけられたら僕はもう......
あ、あれっ?………意識が......とお…………
の………)
………………………
…………………
…バタッ…
「イチローくん!! 大丈夫?......
大丈夫??......」
…………… ………… ……… ……
意識を失った僕は夢の中で昔のことを思い出していた。
「これで5回目。無理………」
高校3年生の卒業式。
幼馴染の小田切奈央はなんの感情もなく
僕の告白を切り捨てた。
長い髪、切れ長な綺麗な瞳、
それに見合うだけのスタイル。
スラッとした透き通るような白い足。
通り過ぎる男はみんな小田切奈央に見惚れてしまう。
小田切奈央は数多くの男から告白されている。
微塵の感情も出さずにすべての告白を切り捨てる。
たとえ幼馴染でさえ容赦はない。
小学校から数えること、僕の5回目の告白は無惨に散った。
小田切奈央が惚れるくらいの男になりたい。
小田切奈央にやきもちを妬かしてみたい。
そして小田切奈央をフッてみたい。
大学デビューして
絶対にかっこよくなって見返してやる!
そんな野望が僕の心にふつふつと燃えたぎる。
高校生までのぼくはいたって普通だ。
名前もありきたりだ。鈴木一朗だ。
あの野球選手のイチローからママが取ったそうだ。
だがもちろんスポーツはでき………ない。
見た目………もごく普通。
背は………高くは無い。
勉強………それは出来た、としたい。
全くモテなかった小中高。どの時代もいじめられっ子だった。
お人好しで優柔不断。見た目も普通。いつも頭に寝癖がついている。
嫌なことは何でも押しつけられる。
クラスによくいる最下層グループに紐付けられる一人だった。
そんな僕とはおさらばだ!
上京!オシャレな大学!青川学院に入学だ!
大学に入学した僕は生れて初めての背伸びをした。
やったことのないダンスサークルに入ろうとしたのだ。
入部届を出しに行くと、まさかの倍率20倍。
入部希望者100人に対して入れるのはたったの5人。
(絶対に無理だ。こんな田舎丸出しの僕じゃ。どうあがいても無理だ)
第一歩目からつまづいてしまう。
「おい、なんでおまえみたいなダサいやつがいるんだよ」
目つきの悪い背の高いイケメンがいきなり僕につっかかってきた。
たしかにかっこいい。でもこの人はやばい人だ。いじめられっ子だった僕の直感がそう言っている。
「ここのダンスサークルはテレビに出るほど
有名なんだよ。
モデルやアイドルしかいねえの。
おまえみたいなやつが来る場所じゃねえよ」
周りの視線が一気に僕たちに集中する。
「ごめんなさい。僕......」
僕は涙目になっていた。
「はははっ!泣きそうでやんの。
田舎に帰ってな」
(やっぱり大学生活もいままでと一緒か......)
僕は一気に表情が暗くなる。
「はいはい、そこの醜男(ぶおとこ)」
女の人の声が僕に突き刺さる。
男だけでなく女の人からも醜男(ぶおとこ)呼ばわり。
終わった...... 大学生活......
「君だよ。そこの目つきの悪い背の高い新入生」
なんとその女の人は目つきの悪いイケメンに醜男(ぶおとこ)と言っていた。
「え!?おれ? あっ!!.........星野まり!」
僕たちの目の前に現れたのはあの有名な現役アイドルの星野まりだった。
そこにいた男も女もそのかわいさに目を奪われる。
もちろん僕もこんなにもかわいい人を見たことがない。
小田切奈央とはまた違うかわいさだ。
「モデルだかなんだか知らないけど他の子をいじめる人間はこのサークルに必要ないの。帰って」
僕でも知っているアイドルの星野まり。
なんとその星野まりが僕をかばってくれている。
「なんでそんなこと言われなきゃいけねんだよ」
「わたし、このサークルの幹部だから。ほら、君はいらない」
星野まりはポイポイと手を振ってどっかいけと追い出そうとする。
「ちっ、覚えていろよ!」
モブキャラのような捨て台詞を吐いてその男は去って行った。
「ごめんね。変なやつがいて」
星野まりが笑顔で直接僕に話しかけてきてくれる。
「は、はい。ありがとうございます」
これはもしや!この流れは。
この後、僕は星野まりに気に入られる、
そして倍率の高いこのサークルに入部するのが王道だ。
ドラマでもアニメでも鉄板の流れだ。
僕は期待に胸を膨らませる。
「でも、きみじゃ、うちのサークルはむずかしいかもねっ」
が~んっ!
僕にもまさかの退場宣告。
それはそうだよね。
一瞬でも夢が見れただけでもよしとしよう。
『生』星野まりとも話せたし、実家に帰ったら自慢しよう。
もう僕はここから立ち去るつもりになっていた。
「まあでも、受けるだけ受けてみて。私がアイドルやってるくらいだから。
どこでどうなるかわからないしね」
星野まりは僕の肩をポンポンと叩き奥の部屋へ消えていった。
星野まりに言われるまま僕は選考会に参加してみた。
(なんでここに来たんだろう……。やっぱり僕のいる場所じゃない...)
周りを見回すと男子のレベルがあまりにも高い。
僕の心は再び折れる。
......しかし、奇跡が起こった......
なんと5人の中の1人に僕は選ばれたのだ。
……………………………………………………
あとがき
第1話をお読みいただきありがとうございました。
私の他の作品からこちらもお読みいただいている読者の皆さん、
本当にありがとうございます。
初めてわたしの作品をお読みいただいた読者のみなさん、これからよろしくお願いします!
ぜひ1話目から面白そうだなと思っていただけましたら☆レビューをお願いできるとうれしいです。
コメント付きでいただけると本当に助かります。
この作品で週間ランキング100位を目指しています。
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