第376話 読める人が生き残る

 この日曜日は、妻が一人でお出かけでした。

 日本語能力試験(JLPT)のリサーチテストがあったのですね。本番の試験とは違うので、頑張っても資格はもらえないし、出来栄えも教えてもらえないのですが、ちょっぴり謝礼が出るという。

 最初は家族3人で行くつもりだったのですが、あいにくの雨。

 娘を濡れさせたくないから一度は諦めようかと思ったのですが、妻が「私ひとりで行ってくる」と宣言。


 普通の日本人夫婦であればなんという事もない状況でしょうが、前にも『第349話 通路ダンジョン』で書いた通り、妻は電車に乗るのが苦手(日本人基準)なのです。

https://kakuyomu.jp/works/16817330655235177535/episodes/16818093073743794916


 前回は

  ・乗り換え不要

  ・一度一緒に行った場所

 だったのですけど、今回は

  ・要乗り換え

  ・乗り換え場所も目的地も行ったことがない

  ・電車から降りた後もそこそこ歩いて、大学キャンパス内の試験会場に行く必要あり

 とちょっと難易度高め。


 事前にGoogle Mapで確認はして、

 「この名前の駅で一旦降りて、このマークのある路線に行くんだよ」

 と教え込みはしたのですけれど、特に電車から降りた後は心配で。

 大学のキャンパス内って色々建物が多いでしょうし。


 まあ、結局は特に道に迷ったりもせず無事に会場について試験も受けられたのですけどね。

 一番心配だった最寄り駅に着いた後も、多くの外国人が試験会場目指して歩いていたので大丈夫だったとのこと。


 妻のレベルアップが見れて嬉しい限りです。

 でも、ちょっぴり私も早稲田のキャンパスを見たかった感もあったり。用が無いのに行く場所でもないしねぇ。


 2週間後の本試験もまた別の大学のキャンパス。今度は2回乗り換えが必要なので丁度いいステップアップになりそうです。


 ちなみに、日本語能力試験(JLPT)日本語が母語ではない人向けの試験なので、日本で生まれ育っている人には関係なかったり。

 日本語メインの人で日本語の能力を認定して欲しい人は「日本語検定」の方を受けましょう。


 日本語能力試験(JLPT)はN1~N5まで段階があり、数字が大きいほど簡単

 N3あれば日常会話はOK、日本人にまじって仕事するならN1,N2が欲しいというぐらいのイメージ。


 例題集がJLPTのサイトでも見れるのですけど、N1の例題は「ちゃん腰を据えて読まないと日本語ネイティブでも間違えうる」レベルです。

 というか、AIに東大入試を解かせるプロジェクトとかの話から考えると、「平均的日本人」なら結構間違えるのだろうなと。


(少なくとも現状の)AIは単語同士の繋がりから「こういう単語の後にはああいう単語が来ることが多い」という情報を蓄えているだけであって、文章を「読解」していないのです。

 なので、何億文ものデータを読ませてやっと、人間が100文読んだのと同じぐらいの結果になるそうで。

 

 でも、人間の方も結構そういう人が多いのだという研究結果も出ているのです。

 AIのような読み方しかできない子供が少なくない……どころか大人にだって結構いるというお話が以下のリンク。

 

 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9e8fd038d86df7334f73b928d88a15cc22156132


 普通に話すと「まさかそんな」というリアクションも多い話なのですが、私は実際に経験があるのでそこそこ納得できる話だったりします。


 私は大学生・大学院生の頃、個別指導塾の講師をアルバイトでしていたのですね。

 そこで教えていると、文章題で文章を読んで式を作る時に

「最近習った式に、文章内で出てきた数値を適当に入れ込んで計算する」

 という子が複数人目につきました。

 例えば、割り算を習った後のテストで

「2人で8つのボールを分けます。1人はいくつのボールをもらえますか」

 という文章題があると、とりあえず2÷8と書くわけです。

 で、間違ってるよと言われて8÷2に直す。

 さらにひどいと2÷1とか8÷1とか書き始めます。

 本気で数字と式しか見てないのですよ。


 これがAIなら「前の文でn人と書かれていて、後の文で1人はと書かれているときはnで割る」というような学習もして正しく答えてくれるので、残念ながらAI以下と言わざるを得ない。

 AIと同じやり方を、AIよりもはるかに暗記量で劣る人間がやったらAIに勝てるわけがないのです。


 将来的には「文章を読解できるAI」も誕生してしまうかもしれませんが、今のところ「文章を読める」のは人間の強み。たくさん本を読んで読解力を鍛えるのはAI時代に生き残る有用な手段の一つなのです。

 ……ってことを長文で訴えかけても本当に必要な層には届かないんですけどね。ここまで読んで「なるほど」と思える人は既にそれなりに読解力は備わっているわけで。


 ただ、わたし自身も「自分はそこそこ読解力があるつもり」ですけれど、それが本当に正しいのかどうかは確認が難しい。

 ……日本語検定受けてみるべきかしら。

 でも、進学や就職に使うわけでもないから自己満足にしかならないしなぁ……とちょっと悩むところです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る