第7話
教会に向かえば、そこは沢山の人で溢れ返っていた。
よくよく見ると、教会に入ろうとしている人は全員首から同じネックレスを下げていた。
その異様な光景に嫌でも少々嫌悪を抱いてしまう。
「すみません、これは一体…」
近くにいた女性に声をかけると、女性は驚いたように私たちを見た。
「あなたたち、もしかして旅人?」
「はい。さっき入国審査を終えたばかりです」
「そうだったの。なら知らないのも無理ないわね」
彼女は微笑むと、私の胸元にあるペンダントに触れた。
「この教会には聖女様がいらっしゃるの。その方はとても慈悲深く、どんな人にでも手を差し伸べてくださるのよ。聖女様が見守ってくださるからこの国も、私たちも平和で豊かに暮らせているの。今からお昼の礼拝が始めるから皆集まっているのよ」
「聖女様…?」
「そうよ。ほら、ちょうど今お見えになったわ」
女性が指差す方向に視線を向けると、教会の中の様子が伺えた。
大きな金色の鳥籠の中に女性が1人立っていた。
純白の衣服に身を包んでいることは遠目からでも分かるが、顔はベールに覆われておりよく見えない。
「あの方が?」
「そうよ。とても綺麗でしょう?私も昔は憧れたものだわ」
うっとりをした表情をする女性に、私は曖昧に笑って誤魔化した。
トレヴァーは聖女様に興味がないようで、警戒するように辺りを見回していた。
「私もそろそろお祈りに行くわね」
「ご丁寧にありがとうございました」
女性は軽く手を振ってその場を離れた。
私も小さく会釈をして別れを告げる。
「何か気になるものでもあった?」
「いや…ただ、これだけの人が集まると何があってもおかしくないからな」
確かにどんどん人が集まってきており、こんなところで事件があったら確実に巻き込まれるだろう。
それに、これだけの人がいては内密な話をしても筒抜けだろう。
「……一旦ここを離れましょうか」
「分かった」
私たちはそのまま教会を後にした。
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