第5話


翌日、私たちは老人の案内もあり目的の国へと無事到着した。

国の少し手前で荷台から降ろしてもらい、老人に向き直る。


「本当にありがとうございます。乗せて頂けなかったら何日かかったことか…」

「こんなことお安い御用ですよ。お2人と旅ができて楽しかったです」


そう言って笑う老人に感謝の言葉を述べてから別れを告げる。



手を振って見送り、老人の姿が見えなくなったのを確認して私たちは歩き出した。


ここからは自分たちの足で情報収集しなければならない。


「まずは情報収集しないとね」

「宿はいいのか?」

「宿は国によって取る場所を見極める必要があるの。色んな宿で泊まるよりも同じところで長期滞在するほうが痕跡を気にしなくていいから楽なのよ」


これから忙しくなる。

緩んでいた気持ちを引き締めないと。


「まずはその短剣を仕舞わないとね」


トレヴァーの腰に下がったままの鞘に視線を落とす。

いくら短剣と言えど、人が見たら警戒するに違いない。


「これぐらいよくないか?」

「よくないわよ。いい?私たちはこの国では兄妹として振る舞うの」

「そ、そこまでするのか…?」

「私たちを恨む人は必ず出てくる。だから嘘に嘘を重ねて身を隠して、少しでも危険を減らす必要があるの」


私の提案に渋々といった様子ではあったが、彼は首を縦に振ってくれた。


気持ちは分かる。

でも少しの隙が後々大きな被害を生むことになるのだ。



結局、個人的に吐く嘘も国を守るために吐く嘘も何ら変わりない。



「…話は戻すけれど、どうやってその剣隠そうか」

「マントで隠せばいいんじゃないか?」

「いい案なんだけれど、国によっては入国検査の時に身体検査がある場合があるのよね~…」


影から入国検査を受けている人の列を眺めながら溜息をつく。

あの様子だとかなり厳しい検査を行っているのだろう。


「じゃあどうすれば……」

「…あなた、何キロまで持ち上げられる?」


トレヴァーは私の言葉に首を傾げた。

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