第2話
「すぐ戻ってくるから待っていてくれ」
森に着いてすぐトレヴァーは私に荷物を預けると、動物を狩るために短剣1本だけを持って森の奥へ向かった。
なぜそんなに信用してくれるのか分からないが、ここは素直に任せておくことにする。
何かがあってもすぐに逃げられるように立ったまま彼を待つ。
夜空では月が眩しいほどに輝いており、彼と城の中で邂逅した夜のことを思い出させる。
あまりにも怒涛の日々に思わず苦笑が漏れる。
体が限界を迎え始めているのか、少し頭がふらついた。
「ロサ!」
瞼が落ちかけたその時、急に名前を呼ばれた。
偽名ではあるが、この名前を呼ぶのは今はトレヴァーしかいない。
彼は駆け足でこちらに近づいてきた。
近づくにつれて彼が困った顔をしているのが分かった。
「どうかしたの?」
「その…」
言いにくそうに視線を彷徨わせていたトレヴァーだったが、意を決したのか私の方を向いて口を開いた。
「…困っていた人がいたから助けたらお礼をしたいと言われて…」
「え?」
話を聞くもよく分からない。
そもそもこんな森で野宿するよりも近くの国で夜を明かした方が安全だと思う。
「どんな人だったの?」
「老人だ。荷台を馬に引かせていて、1人だった」
「なるほどね」
話を聞く限り商人だろう。
色々疑問に思う部分はあるが、もし本当にお礼をしてくれるのなら荷台に乗せてもらい移動したいところだ。
「分かった。その人の所へ連れて行って」
「いいのか?」
「うん。でも警戒は怠らないで。一瞬でも不審な動きを見せたらすぐに動けるようにしてね」
「ああ、分かった」
私はトランクを持ち上げて歩き出した彼の背中を追った。
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