第30話
「いいですか?今から言うことをよく聞いてください。トレヴァーはここの国の警備隊に顔が割れているので、もし声をかけられても焦らず普通に対応してください。私に言及されたら『この令嬢を国にお送りする』と言ってください。絶対に焦らないこと」
「分かった」
トレヴァーはすでに服を着替えており、2人で手分けしてお金や売れそうな物を鞄に詰めたため最後の確認をしていた。
この国を出るまでは気を抜くことは許されない。
大きく括れば、これはトレヴァーに課した最初の課題でもある。
「じゃあいつも通り影に入っているから」
「何かに気づいたらまた教えて」
「あぁ」
猫の準備も整ったようだ。
2人で窓から外に出て街に出る。
静かな街は物音1つしない。
「このまま東門から国を出ましょう」
「…いや、西門の方がいい。この時間に東門から帰られる招待客がいた気がする」
トレヴァーの助言を疑いかけるも、今は彼の情報を信じるべきだろうと頷いた。
「分かったわ。じゃあ西門から迂回して東に行きましょう」
「東に何かあるのか?」
「…いや、この前ここから西の国は滅ぼしたから東に行った方が次の仕事が見つけやすいのよ」
「あれもロサがやったのか!?」
驚いた様子のトレヴァーにため息をつく。
「それもきっかけを作っただけだけれどね…あ、でも西に行くのもありかも」
「どうしてだ?」
「西の国は内乱が起きて混沌としているの。だからそこにこの国の情報を売っても良さそうなのよ。うまくいけば3日ぐらいでここを潰せる」
「……何と言うか、とんでもないこと考えているな」
「この程度、その内何とも思わなくなるわよ」
トレヴァーの言う通り、警備が東門に偏っているのか西門の方にはほとんど人がいなかった。
言い訳も上手いこと使いながら問題なく門を通過する。
「…嘘が上手いのね」
「そうか?俺は言われたことを精一杯遂行しただけだ」
なるほど。
国の犬とはよく言ったが、これは良い忠犬を得たのかもしれない。
「このまましばらく歩くけれど大丈夫?」
「これでも警備隊の隊長だったんだ。体力には自信がある」
「そう。じゃあ今日は行けるところまで行きましょう」
朝焼けに染まりつつある空を見ながら、私とトレヴァーは歩き出した。
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