第29話
「良いぞ良いぞ!!だから人間は面白い!」
「これだけ腐った国を滅ぼすきっかけがここにあるなんて最高だと思うんだよ。それも、武力や権力ではなくただの旅人に滅ぼされるなんて」
「気に入った!連れて行こう!!」
「ちょ、ちょっと待って」
盛り上がっている2人に割って入る。
「あなたたちだけで話を進めないで」
「なんだ、文句があるのか」
「あるわよ。言わせてもらうけれど、これはお遊びじゃないの」
そう言うと、猫とトレヴァー様は顔を見合わせる。
「それでも面白いと思ったし、何より俺も参加したいとも思った」
「……それ本気で言ってます?」
「さっきから嘘なんてついていない」
心外だとでもいう様にトレヴァー様は唇を尖らせる。
私は頭を抱えたくなった。
なんで猫とトレヴァー様が息合ってるんだよ。
「というか、ここで長々と話していいのか?あと1時間もすれば夜が明けるぞ」
「あっ!そうだ、今日出る予定だった!!」
猫の言葉で時計を見れば、予定よりもだいぶ時間が経っていた。
トレヴァー様は何に慌てているか分からないようで不思議そうに私を見る。
「朝日が昇る前にこの国を出るんです。今日ならまだ招待客が城に滞在しているので警備に偏りがあるので」
「…確かにそうだが、よくそんなところに気づくな」
「まぁ、場数踏んでますので」
セーズ様から拝借したトランクを開けて中の服をトレヴァー様に渡す。
「今すぐこの屋敷にあるお金や売れそうなものを持ってきてください。あと衣服も数着。そのあとここに帰ってき次第、この服に着替えてください」
「…え?」
「ついてくるんでしょう?これからは様付けなんて誰からもされないし、私もする気はないので」
そう言って笑ってやれば、トレヴァーはキラキラとした少年のような目で私を見てきた。
「分かった!!」
そのまま走って部屋を出ていく彼を見送ってからため息をついた。
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