第27話
その後のパーティーは何に問題もなく終わった。
皆が片付けに追われてせわしなく動く隙をついて城から抜け出す。
「今夜中にこの国を出るわよ。今ならまだ招待客に警備が偏っているだろうし」
「分かった」
屋敷の自室に戻り、予め買っておいた新しい簡易ドレスに着替える。
ローブを着ていると怪しまれかねないからこの服装の方が便利だった。
これもまた、今まで色んな国を渡り歩く中で身につけた知識だった。
部屋の窓を開けトランクを持ち直した時、部屋の扉がノックされた。
警戒して無言で部屋の物陰に隠れると、ノックした人物は名乗る。
「トレヴァーだ。少し話したいことがある」
「…何でしょうか。話したいことなら扉越しでお願いします」
自分を捕まえに来たのではないかという不安があるためドア越しに声を張れば、扉の向こうから躊躇った気配を感じる。
「…扉越しでいいのか?その、先ほどの話なのだが」
ここはメイドや執事が寝泊まりする寮である。
そこでトレヴァー様が扉越しにメイドと会話をするというのはだいぶ変な光景である。
人が集まることは1番避けたかったため、仕方なく部屋の鍵を開ける。
「分かりました。入ってきたらすぐに鍵を閉めてください」
「あぁ、約束する」
部屋に入って来たトレヴァー様は約束通り鍵を閉めた。
そして攻撃する意思がないことを表したいのか、両手を上げた。
「武器は何も持っていない。剣も置いてきた」
「…こんな時間に警備隊の隊長様がここで何をしているんですか」
「……これから滅びる国の警備しても意味ないだろう?」
トレヴァー様は苦笑しながら私を見た。
「それでお話とは?」
「ロサはこの国を出たらどうするんだ?」
「…それを聞いてどうするんですか」
私の正体を知ったトレヴァー様は私を引き止めたいのだろうか。
そんなことを考えながら警戒して彼を見ると、彼は真剣な表情をしていた。
「俺も連れて行ってほしい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます