第23話
コルクから鍵を抜いてトランクの中の鍵穴に挿して回す。
カチャリという小さな音と共に開いたのを確認してから中身を確認する。
「やっぱりあった。それにしても……随分と沢山入ってんだね」
そこには大量の金貨と詰まっていた。
ざっと見ただけでもかなりの金額になる。
これでも十分生活できるが、私が欲しかったのは金貨の下に敷かれている書類だ。
「それは?」
「子どもたちの人身売買に関する書類。本当に子どもたちを売ることで国費を得ているなら契約書がないと不自然だもの」
書類を手に取って内容を確かめる。
思った通りの内容が書かれていて、思わず口元が緩む。
「これも合わせて渡せば、同じ情報でも高値で買ってくれる」
「証拠探しをしていたわけか」
「そういうこと」
書類をトランクに入れ直して鍵をかける。
折角だし、このトランクごと頂くことにした。
「できればこれを屋敷に持ち帰りたい……そうだ、この前の偵察で見つけた抜け道を使えそうね」
以前、見回りの2人から足を切り落とされた子どもの話を聞く直前に城壁に変なくぼみがあった。
あそこから城の外に出ることができれば、そこから屋敷に向かうことは容易い。
「行くしかないわね」
セーズ様の部屋から出て、見つからないように外に出る。
多少の音がして見つかってもメイド服なため、あまり怪しまれないだろう。
見張りが逆の方向を見たタイミングで塀に近づいて探れば、あの時の窪みがあった。
塀を見上げれば、足と手がかかるように点々と窪みが続いていた。
トランクを塀の向こうに投げてから猫の身体能力を借りて塀を上る。
降りた時の着地音がしないのも猫の能力のおかげなのかもしれないが、おかげで問題なく城から出ることができた。
屋敷に戻り、自室のクローゼットにトランクを隠してから、息をつく間もなく城へ戻る。
セーズ様はお酒の飲みすぎで眠ってしまったと言えば問題ないだろう。
実際眠っているんだし。
「欲しかった情報も集めたし、言い訳も考えた。今回の仕事も順調に終わりそうね」
「いつもより時間がかかったがな」
「今回はしばらく安心して過ごせそうなぐらいお金もあるから結果的には良かったんじゃないかしら?」
そう言えば猫は一声鳴いて私の影に入っていった。
私もそれを見てから他の給仕の手伝いをするため廊下に出た。
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