第21話
「ロサ、君に渡したいものがあるんだ」
「なんでしょうか?」
「これを受け取って欲しい」
セーズ様に渡されたのは綺麗に包装された箱だ。
「開けてもよろしいですか?」
「勿論」
丁寧に包み紙を剥いでいくと、中には指輪が入っていた。
「わぁ!綺麗ですね!!でも、こんな高価なものはいただけませんよ」
「私が贈りたかっただけだから気にしないでくれ。それよりもはめてみてくれないか?」
「はい」
セーズ様に指輪を嵌めてもらう。
彼は何のためらいもなく左手の薬指に嵌めてきた。
「とても似合っているよ」
「ありがとうございます」
「実は左手の薬指の指輪には婚約の意味があるんだ」
「えぇ!?」
知らなかったという様な反応をして見せる。
顔を隠して照れたふりをする。
「…ねぇ、ここだと人の目があるから良かったら私の泊まっている部屋に来ないかい?美味しいお菓子もあるよ」
「お菓子ですか!行きたいです!」
自然に手を繋がれ、部屋に連れていかれる。
純真無垢な子どもはきっと何も警戒せずについていくだろう。
でも私は無意識の内に肩に力が入ってしまう。
ここが1番重要な局面だ。
部屋に入るなり、鍵を閉められる。
「どうして鍵を?」
「知らない人が勝手に入って来ないようにするためだよ」
そんなのは嘘だ。
きっとセーズ様は私を逃がさないために鍵を閉めたのだろう。
でもきっとすぐ後悔することになるだろう。
「さぁ、ロサ。こっちにおいで」
セーズ様は部屋に設置されたソファに手招きした。
そのまま隣に座れば、クッキーやチョコレートが入った箱を差し出される。
普通のお菓子よりも何倍も匂いが強いそれに違和感を覚える。
そのお菓子には明らかに異物が混ざっている。
睡眠薬か媚薬か痺れ薬か。
どれにしろ身体の自由を奪う類のものだろう。
「ロサのために用意したんだ。ぜひ食べてほしい」
セーズ様の魂胆は分かった。
ならこっちだって反抗してやる。
「セーズ様、私、眠たいです…」
クッキーを持ちながら、途切れ途切れに話して欠伸をして見せる。
するとセーズ様は欲情した目で私のことを見つめ、私を横抱きにしてベッドへと運んだ。
そのまま押し倒される。
「セーズ様…?」
「大丈夫。優しくするよ」
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