第18話
「ロサちゃん!そろそろ出発するわよ~」
「今行きます!」
昨日の件で、私は今日は給仕として城に行くことになった。
アメリアさんは私の話を聞いて、きゃーと歓声を上げていたが残念ながらそんな甘い展開はない。
今日は本気を出す上に、自衛もしなければならないため最初から黒猫には私の影に入ってもらうことにした。
寮の玄関で他の先輩方と合流して城に向かう。
トレヴァー様は先に城で仕事をなさっているようだ。
城門を通り過ぎ、準備室の方に通される。
どうやらすでに各国の要人が城内にいるらしく、私たちは裏道を使うことを推奨された。
「ロサちゃんは人が足りなさそうなところを転々としていていいからね。もしくは、ロサちゃんをご所望のセーズ様の所に行ってもいいし」
「流石に皆さんのお手伝いをしますよ!でもいなくなったら…察してください」
「うんうん!」
…申し訳ないが、これでも子どもなのだが。
子どもに対してのそういう行為を止めない大人たちに違和感を持つ。
まぁ、そのおかげで仕事がしやすいのだから文句を言うつもりはないが。
「お気遣いありがとうございます」
お礼を伝えてから各々の仕事に取り掛かることになった。
そしてあっという間に日は暮れ、今まさにパーティーが始まろうとしていた。
私は会場に料理を運ぶ役目だ。
しかし、他の給仕たちにもセーズ様の私に対するお気持ちが伝わっているのか、呼ばれたらすぐに行くように念押しされる。
その言葉に甘えて、少し持ち場を離れさせてもらった。
向かうのはセーズ様の所ではなく、城の見張り塔だ。
城の横に高くそびえ立つ塔の上部では、警備隊らしき人が監視の為に動いているのが見える。
「…本当にここに子どもたちがいるの?」
「あぁ、間違いない。ちゃんとこの目で見たからな」
影から猫が目を覗かせた。
城に下見に行った日の夜、猫は衝撃的なことを話した。
『城の見張り塔の地下には子どもが監禁されている』
猫によると、街を散策していた時に子どもが攫われるのを見かけ、ついていったら地下に沢山の子どもを見つけたそうだ。
中には手足がなかったり、耳が聞こえなかったりする子もいたらしい。
「きっと見かけ上は見張り塔だから地下への階段は隠されているはず。まずはそれを見つけないとね」
「じゃあ…そうだな、耳を貸そうか」
猫がそういうと、急に聴力が鋭くなる。
気づかれないように塔に入り、床に耳を近づける。
すると、一部の床から風が通る音がする。
「ここだ」
その部分を触ってみると、指がかかりそうな部分を見つけた。
蓋のような形状になっており、ゆっくりと持ち上げてみるとそこには暗い空間が広がっていた。
しかし、猫の目のおかげで私には暗闇に続く階段が見えた。
「子どもたちを助けるのか?」
「いい子たちだったらね」
そのまま階段を降り始める。
勿論、蓋は元に戻しておいた。
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