第15話


あっという間に日は過ぎ、パーティーまでは残り1週間となっていた。

パーティーに向けての準備は着々と進められており、私もすでに何度か城に派遣された。


「ロサちゃーん、ちょっといい?」

「はーい!」


休憩中にアメリアさんに呼ばれたと思ったら、何やら別室に連れていかれる。

そこにはすでにお城の派遣に立候補した先輩方が揃っていた。

そのメンツ以上に、部屋に置かれているおびただしい数の採寸用のドレスに若干引いてしまう。


「なんですか、これ」

「お城で働く時はメイド服を統一してほしいというお達しがあったから新調することになったの。準備の時でも統一感を持たせて欲しいんだって」

「そういうことですか」


にしても、1週間で仕立てが間に合うのだろうか。

しかもなんか高そうだし。


「服代はトレヴァー様が負担してくださるらしいから心配しなくていいわよ」

「それなら安心ですね」


やはり皆思うことは一緒だったのか、その話を聞いて幾分か表情が和らいだ。

そして流石メイドとでも言うべきか、テキパキと採寸や試着を終わらせて、あっという間に全員のサイズが紙に書き込まれていった。


「じゃあこれで申請出しちゃうわね」

「ちなみに完成予想図とかあるんですか?」

「これよ」


1枚の紙が皆に見えるように広げられた。

そこには白と黒の見慣れたメイド服ではなく、ドレスを基調として作られたようなメイド服が描かれていた。


「これ、メイド服なんですか?」

「パーティーの会場では、明らかに給仕という格好よりも少しでも場に馴染みやすい格好の方が推奨されるのよ」


この国には変わった文化があるらしい。

もしくは、裏では他の理由があるのかもしれないが。

疑いすぎであって欲しいが、警戒しておくことに越したことは無いだろう。


「他国の貴族や王族も来るらしく、今年は昨年よりも大きなパーティーになりそうなの」

「皆さんは去年も出られたんですか?」


そう聞くと頷く人半分、首を横に振る人半分だった。


「でも去年以上となると、警備体制がえげつないことになりそうですね」

「えぇ、今年はトレヴァー様直々に警備に当たられるらしいわよ」


それは非常にまずい。

準備の段階で先に道具を城内に持ち込んで、パーティーの当日に手薄になった書庫を調べようと思っていたのだが…。

あの人、どこか鋭そうだからできれば敵対したくないのが本音だ。


まぁ……仕方ないか。


ここまで来たらやるしかない。

それに、いざとなったら猫もいる。


「ロサちゃん、準備の時はよろしくね」

「はい、こちらこそ!」


とりあえず今は目の前の仕事に集中しなければ。

そう思いながら、私は先輩方に笑顔を向けた。

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