第1話


「ねぇ、聞いた?ここから西にずっと行った国で内乱が起こったらしいわよ」

「聞いた聞いた!なんでも貴族の不正が公になったことがきっかけだとか」

「えー!?それ本当!?じゃあ今この国は大丈夫なのかしら?」

「分からないけど……もし本当に内戦になったら大変よね……」


偶然すれ違った2人の女性がそんな会話をしながら歩いていた。

その話を聞いて思わず笑ってしまった。


「あのお兄さん、もう動いたんだ」


小声でそう呟くも誰も気に留めない。

そのまま女性達の横を通り過ぎる。


「やっぱり情報屋やってる人は優秀なんだよな~」


私の予想以上の動きだ。

まぁ、私は情報を予想以上の高値で買い取ってもらえたから十分なんだけれどね。

適当な飲食店に入って適当に料理を注文する。

料理が運ばれてくるまでの間、窓から見える街の様子を観察してみる。

馬車も通っているし、建造物の造りもしっかりしている。

でもこういう綺麗な国ほど大きな秘密を抱えているものである。


「…次はこの国かな」


私の呟きをかき消すかのように、美味しそうな匂いと共に料理が運ばれてきた。

それを食べながら頭の中で今後の計画を練る。

とりあえず、いつも通り街を歩いて雰囲気を掴もう。

それで良さそうな場所があったらそこにしばらく留まってもいいかもしれない。


この国の情報屋はいくらで面白い話を買ってくれるのか今から楽しみで仕方なかった。


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