応援コメント

7 昆虫じみた無機質な嗜虐性」への応援コメント

  • 初めまして。
    この度は『あなたの作品を勝手に分析します』企画にご参加いただき、ありがとうございました。主催者の島流しにされた男爵イモです。

    さて、本作は冒頭からノワールな雰囲気が漂っており、一昔前の歌舞伎町を思わせる薄暗いリアルを感じ取ることができました。土地に縛られて逃げられない、そんな閉塞感や絶望感が丁寧に描写されていたのではないでしょうか。就活の場面も滑稽で、良い意味で馬鹿っぽくて皮肉が利いていました。実際にこんなことをさせられるのですから、本当に困ったものですよね。全体として内容と文章の硬さが合致しており、読みやすい印象でした。これからどのように物語の舵が切られるのかはわかりませんが、先の展開への想像が膨らむ作品でした。

    気になった点は大きく分けて、展開と描写です。
    まずは展開について。ここまで拝読した限り、主人公とユゲ先輩の邂逅がこの物語の「起」に該当すると思っているのですが、それは間違いないでしょうか。純文学の趣もあったので起承転結に薄い作品にも捉えられましたが、一先ずここでは「起」の解釈で進めさせていただきます。さて、そうなった場合、この二人が接触するまでの経緯が不自然に感じました。主人公は切羽詰まっているとはいえ、表の人間。わざわざ半グレのような面倒な人間に近づく意味がないのではと。自暴自棄になっているにしろ、なにかしら展開に対する根拠や動機づけが必要になると考えられます。

    たとえば主人公も職場の上司と同様に自爆営業をしており、巨額の借金を抱え込むはめになった。他には営業で恐喝紛いのことをしており、その相手のうしろに実はユゲ先輩がいて、逆に強請られるなど。現状ですと世界観として納得できるようでもある反面、やや不自然さが勝るといった具合です。

    次は描写について。
    まずは主人公の名前。意図的に伏せられているようにも読み取れましたが、折角なので名前があった方が良いのではと思いました。地の文が一人称なので、ジョーに呼ばれるといった流れで名前を開示するなど。これは、どうするかは作者様にお任せします。

    あとはジョーの恰好などの描写でしょうか。一話目の終盤で紹介されていましたが、もう少し手前にあった方が読者目線での状況把握の流れとして伝わりやすい印象です。

    最後に一点だけ誤字報告です。
    『3 美しき生命』より一部抜粋「電車で体調が悪くなったの方の介抱をされたんですって?」とありますが、「なったの方の」の部分は「の」が一つ余分かと思われます。

    それでは、長々と失礼しました。
    少しでも作者様の執筆活動のお役に立てたのなら幸いです。

    作者からの返信

    とても参考になる分析をありがとうございます。

    また、誤字の指摘もありがとうございます。とても助かります。

    展開と描写についての指摘は、「なるほど、たしかにそうだな」と考えさせられました。

    (余談ですが、物語の『起』はもう少し手前で、就職した会社の退職と考えていました。
    街を出て働く→挫折する→街に戻り、街のやり方にならうことにする)

    自分の想定と、読んでくださった方の受け取り方の差分をわかりやすく理解でき、とても参考なりました。

    細かく読み込んでいただき、助言までいただき本当にありがとうございます。
    今後の糧とさせていただきます。