今は遠き故郷のために
長月瓦礫
今は遠き故郷のために
もはや、ここに私の居場所はない。
どれだけ家が綺麗になろうと、私の心は決して交わらない。
すぐに気づいてしまった。
ここに私の居場所はない。
ここは私のいるべき場所ではない。
爪をがじがじ噛む。
轟く雷鳴、響く豪雨、窓に滴る怒りの粒。
私の肺は排気ガスにまみれた空気で満たされ、心臓は人々の雑踏と同じリズムを刻む。
騒がしい音楽で育った私には、この家はあまりにも広すぎる。
静かで悪趣味で、あまりにも不気味だ。
もはや、この家に私の居場所はないのだ。
迎合しないこと。
許さないこと。
いつか戻ること。
諦めずに決意を抱き続ければ、いつか必ず故郷に戻れるだろう。
今は遠く、虚ろな空に夢を見るしかない。
指がぼろぼろになるのが先か、故郷に戻るのが先か。
爪をがじがじと噛んで、雨雲に沈む故郷を探した。
今は遠き故郷のために 長月瓦礫 @debrisbottle00
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