6 Sio.side

自分でも、よくわからない。


何がこんなに悲しいのか、何がこんなに痛いのか。




わかりきっていたことを、ただ確認しただけなのに。


ただどうしようもなく苦しくて、涙だけが、絶えず溢れ出してくる。








「辛いこと、ばっかりじゃなかったのに…」




幸せなことだって、沢山あったはずなのに。




「全部…もう綺麗に思い出せない」




俺がただあいつだけを想っていたあの頃も、あいつの心には、もう他の人がいたかもしれない。


そう思うと、綺麗だった思い出が全部、くすんでいく。






「…確かめない方が、良かったのかな……?」




でも、どんなに辛いことでも、それを確かめることで…それを認めることで、答えが見つかるような気がしたから。








「確かめなきゃわからないことも、きっとあると思うよ」




うん。そうだね。




確かめたからこそわかったことが、確かに一つだけある。






俺は、きっと自分が思っていた以上に、あいつのことを、まだちゃんと愛していたんだ。




ただ、その愛の重さが、あいつの愛とは釣り合わなかった。


きっと確かめなくても、結果は同じだっただろう。




あいつと俺の愛は、たとえどれだけ一緒にいても、永遠に釣り合うことはない。




最初から、決まってたんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る