【最終回】 学校外で先生と会ったら、関係は進むのか?

 柏木先生が行くスポーツクラブが、俺の家から近いスポーツクラブと一致している可能性がある。明日の10時30分頃行くと言っていたので、会えるように準備しておこう。



 そして当日。俺は10時20分頃に、出入口付近でスタンバイしている。ここで待っていたら、すれ違うことはないからな。完璧なプランだろ?


…会員さんが俺をジロジロ観ながら入店する。怪しいのはわかっているが、メンタルにくる。先生、早く来てくれ~。



 …10時40分になった。10分オーバーぐらいなら許容範囲か? もし11時まで待っても来なかったら、俺の思惑は失敗ってことにしよう。待ち疲れたしな。


そう思っていた時、1台の車が駐車場に駐車し、見覚えがある人が降りてきた。

…柏木先生だ。向こうはまだ俺に気付いてないみたいだな。


先生はスポーツクラブの出入り口に向かって歩いてくる。その付近にいる俺の存在に気付いた後、歩くペースを速めて来てくれた。


「坂口君。どうしてここに?」

先生は少し驚いた表情をしている。


説明するのは当然だが、今は外だ。“先生”と呼ばないように注意しよう。


「柏木さんが、昨日の電話でここの店名を言ってくれたでしょ? この店、俺の家から近いんですよ。外で柏木さんに会いたいって、前話しましたよね?」


「教師と生徒がプライベートで会うのはマズいって、以前伝えたはずだけど?」


「今の俺と柏木さんは、『友達』ですよね? それに“偶然”会ったんです。会員制のところで会っただけなんだから、問題ないでしょ?」


先生は少し考え込んだ後…。


「確かにそうかもしれないわね。念のため、他言無用で頼むわ」


「もちろんです」

“話せ”と言われても、言う気はないぜ。


「今日はフリーレーンで泳ぐつもりなんだけど、水着は持ってる?」


「持ってますよ。運動着もね。柏木さんがどんな運動を選んでもバッチリですよ」


「意外に準備万端ね。それじゃ、あとでプールサイドに集合しましょう」


「了解です!」


一緒に過ごす許可をもらった俺は、先生と一緒に入店し会員証を見せる。

昨日ネットで手続きし、待つ間に受け取ったのだ。



 男女ロッカー前で別れ、俺は水着に着替える。先生の水着姿は、2日前に渡り廊下で見下ろす形で観ただけだ。今は間近で観られるので、テンションが上がるぞ!


そしてプールサイドに出て、先生を待つ。女性の着替えは時間がかかるものだし、気長に待つとしよう。


…数分経過しただろうか。俺にとってかなり待たされた気がするが、先生がプールサイドに現れた。


「柏木さん、スタイル良いですね~」


普段のスーツ姿ではわからなかったが、予想より胸が大きい。他の部分も申し分なし。さすがスポーツクラブに通っているだけはある。


「声が大きいわよ。そういうことは、公衆の面前で言うことじゃないわ」

小声で注意してくる先生。


「すみません、ついテンションが上がっちゃいまして」


「男の子だものね、仕方ないか」

クスッと笑う先生。


「今は10時55分だから、11時40分まで泳ぎましょう。…良いかしら?」

プールサイドにある時計で、時間を確認しながら言う先生。


「俺、もっと泳げると思いますよ」


フリーレーンには、数人並んでいる。泳げる時間は限られているし、時間を延長しても良いと思うが…。


「だったら、坂口君はできるだけ頑張れば良いわ。…よく考えると、私に合わせる必要なかったわね。ごめんなさい、うっかりしてたわ」


「…そう思ってましたが、疲れを次の日まで引きずりたくないので、俺も柏木さんと同じ時間に切り上げます」


先生に会うために来たのに、1人残っても意味がない…。


「それが賢明よ。並んだら、私語厳禁ね」


「はい」


俺は先生の後ろに付き、列に加わる。順番の関係で先生の泳ぎを先に観たんだが、キレイな平泳ぎで感動したぜ。俺はフォームがなってないクロールを周りに見せてしまった…。さっさと忘れて欲しいと願うばかりだ。


再び俺の順番になった時、先生の見よう見まねで平泳ぎをすることにした。


…それもイマイチな結果で終わる。手っ取り早く上手になる方法はないので、回数を重ねるしかなさそうだ。



 ……俺と先生は、最初に話した11時40分まで泳いだ。意外に楽しい時間だったが、疲労感もある。この時間で切り上げて正解だな。


「もうそろそろお昼になるけど、坂口君は予定ある?」

先生に訊かれる。


「特にないですよ」

先生との時間は、これで終わりか。とはいえ、チャンスはまたあるよな。


「“ドライブスルー”で良かったらだけど、何か買ってあげるわよ?」


「え? 良いんですか?」

先生に奢ってもらえるなんて…。マジ嬉しい。


「これも秘密でお願いね♪」


「わかってますよ。誰にも言いません」

ドライブスルーってことは、“先生の車に乗れる”ってことじゃん!


「それじゃあ、12時を目安に出入口あたりで待ってて。髪をドライヤーで乾かす時間があるから、ちょっと遅くなるかもしれないけど…」


「全然構いません。ちゃんと待ちますので」

女性の準備には時間がかかる。これは常識なので、ツッコむ気はない。


「なるべく急ぐからね」


俺と先生は、更衣室に戻って帰る準備をすることになる。



 ……結局、先生は12時5分頃に出入り口付近に来た。15分ぐらい待たされたが、次の展開を妄想して楽しんでいたので、全然苦じゃなかったぞ。


その後、先生に付いて行き彼女の車に乗る。乗る場所は助手席だ。


「行く場所は、〇ックで良いかしら?」

行き先を伝える先生。


「良いですよ」


こうして、先生の車は最寄りの〇ックに向かう。



 「坂口君。どうして私がドライブスルーを選んだかわかる?」

赤信号で停止中、先生が訊いてくる。


「人目を避けるためでしょ? いくら俺でも、それぐらいはわかりますって」


「わかってくれてるなら良いわ」


〇ックに着いた後、俺は先生に買って欲しいメニューを伝える。

先生は異論を言わず奢ってくれた。本当に良い人だよな。


注文したメニューを受け取った後、〇ックの駐車場に止めて食べる俺と先生。

問題はこの後だ。時期尚早かもしれないが、我慢できないので伝えることにする。


そう、『先生の家に行きたい』とね。今なら“脈あり”だと思うんだがな…。



 無事食べ終わった俺達。言うタイミングはすぐだ。


「柏木さん、これから予定あります?」


「特にないわよ。コンビニで菓子パンとかデザートを買いたいと思ってるけど」


「そうですか…」

いつ言おう? …緊張するぜ。


「私に何か用事? 出来る範囲であれば、手伝うけど」

先生が俺の顔を覗き込んでくる。


「あの…、柏木さん」

この間に、決心を付けよう。


「何かしら?」


「……柏木さんの家に、行かせてください!」

ついに言ってしまった。


「坂口君。私の家に興味があるのは、どうしてなの?」


「気になる人がどういうプライベートを送っているかを知りたいんです!」


「気になる人って…、私のこと?」

先生が呆気にとられながら、自身を指差す。


「当然じゃないですか! 俺は柏木さんのことを『先生以上』として観てます」


「……」

先生は何も言ってこない。 ドン引きされてしまったか…?


そう思った時…。


「私も坂口君を『生徒以上』として観てるわ。可愛い弟みたいにね」


弟か…。歳の差的に仕方ないが、それでも生徒以上に思ってくれるのは嬉しい。


「…坂口君に免じて、特別に連れて行ってあげるわよ。ただし、期待しちゃダメだからね。わかった?」


念を押してくる先生。


「わかってます」

“先生の部屋”であることに価値があるんだ。キレイかどうかは二の次だぜ。


仮に汚部屋なら片付けを手伝おう。話すきっかけになるし、関係が深まること間違いなし。俺が損することなんて、何1つ存在しない!


「じゃあ、行きましょうか。私の家に」

先生の車は、自宅に向かって走り出す。

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教室の中心でエロ話をしたら、女担任が興味津々に聴いているんだが!? あかせ @red_blanc

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