第19話 玲子の演技力
「この前はどうも。玲子ちゃん」
「あ、どうも。蒼汰さん」
「いやー、人生で初めてだよ、あんな経験」
少し、ムッとしているのが解る。
「そうですよねー。蒼汰さんは格好いいチョー人気モデル&俳優ですもんねー。そんな人が、ほぼ一般人に近い凪なんかにライバル心燃やしてからかったりするから、嚙まれたんですよ。そう言うの、自業自得って言うんでしょうね」
「…君って、本当に頭いいんだねー…。俺をまんまとわざとデートに参加させることで、俺から玲子ちゃんを凪くんに奪わせたんだから」
「そう思うなら、もう邪魔しないでくださいよ?」
「2人でこそこそなんのはなしですかぁ?」
優姫那だ。優姫那は、甘ったるい声で、蒼汰の腕に腕を絡ませる。
「んー…別に?ある、大すきだった女の子にフラれちゃったって話をしてただけ」
「えー!!蒼汰さん、すきな人居たんですかぁ!?」
優姫那が大袈裟に驚く。
「知ってたの?玲子さん!」
「知らないよ。それに、さん、要らないから。本当。もっと仲よくしよう?優姫那ちゃん」
「そうだね。私、一応ヒロインだし?玲子ちゃん、結局はライバル役なんだしね」
嫌味たーっぷりに、優姫那は言った。
「ライバル役、私本当にあってるみたい。気持ちいいよー!言いたいこと言えて」
嫌味たーっぷりに、玲子も言い返す。そもそもは、玲子はこういうやり取りはすきじゃない。でも、それなりに、負けん気が無ければ、この世界ではやっていけない。そう言うことも、玲子は分っている。
*****
「じゃあ、シーン43!いきまーす!!」
【どうして?
「カット!う~ん…優姫那ちゃん、そこで泣いてくれないと、ドラマ迫力出ないんだよね…」
「あ…あの…すみません…」
「ねぇ、ちょっと、玲子ちゃん、セリフ、読んでみて」
「え?私がですか?でも…私、セルフ、憶えてないです」
「良いの。本読んでいいから。演技だけはしっかりね」
「は…はい」
「じゃあ、一応、スタートの声、かけるから」
「はい!じゃあ、スタッ!」
【どうして?どうしてなの?陽介…くん…。騙されてるんだよ?あの…あの子に!!どうしてそれを信じてくれないの!?それなのに…それなのに…どうして真純ちゃんのいうことは信じるのよぉ!!??】
「「「「「…………………」」」」」
「?」
辺りは、一瞬、静まり返った。玲子の瞳からはポロポロと涙が流れ、手は震え、台本とは全く違ったセリフが、玲子の口から放たれ、誰がどうも見ても、誰がどう聞いても、優姫那の演技より、優れ、目立ち、貫禄すら感じられた。
「あ…の…すみません…。台本、変え過ぎました?泣くのは、一応できてたと思うんですけど…。すみません…」
「いいよ!いいよ!玲子ちゃん!!もう大俳優顔負け!!」
「あ、ありがとうございます」
「玲子ちゃん、次のドラマの打ち合わせも、したくなったなぁ…。来週あたり、時間取れる?
「あ!はい!良いよな!?玲子!!」
「は!はい!!よろしくお願いします!!」
こうして玲子は、順調に仕事に取り組んでいくことになる。
不安要素は、まだまだ、あるのだけれど―――…。
気付いたら尻に敷かれてた 涼 @m-amiya
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