第18話 死にますよ?

「はっあーい!おはよー!2人とも!!」


「「おはようございます」」


とーっても上機嫌で現れた蒼汰と、とーっても不機嫌で待ち合わせ場所に着いていた玲子と凪。


「おー!君が犬くん?」


「す・が・わ・ら!凪です!!」


「あぁ、ごめんごめん!悪気ないから。許して。凪くん♡」


(こいつ…マジうぜー…)


イライラする凪に、同じくイライラする玲子。


「で?今日は映画見るんだよね?ここで待ち合わせなんだから」


「いいえ、街、歩きません?で」


「へ~いいんだ。もしかしたら、俺らバレちゃうかもよ?」


「大丈夫ですよ」


玲子は笑顔を作る。何だか不気味だが、蒼汰はそれに気付いていない。


「へー、玲子ちゃんと凪くん、幼馴染だったんだ」


「はい。腐れ縁ですよ。ね?凪」


「あ、はい。もう昔は可愛かったのに、いっ!!」


ドスッ!っと胸を玲子が肘で、突い…殴った。


「あ、い、今も、まぁまぁ、可愛いっすよ…」


「まぁまぁなんだ。なーんだ。もしかしてあんまり仲良くないの?俺が介入するするチャンスありって感じ―?」


「「ありません」」


「あはは!!仲良いんだねぇー」


思いがけず、言葉が重なって、一瞬下を向いて、凪は解りやすく、恥じらった。


玲子は、フンッ…と、どうでも良い…と言う顔をして、ごく普通だ。さすが玲子。






その後、映画を観るでもなく、買い物をするでもなく、ご飯を食べるでもなく、ただただ、3人は街をぶらついていた。


「ねぇねぇ、玲子ちゃん。どうしたの?どっかいかないの?」


「こうして歩いてるじゃないですか。これ、私たちのいつも通りのデートなので」


「え――?そうなの――?今日は俺が居るんだから、特別にしようよう!!」


「じゃあ、なんでついてきたんですか?私は、凪と一緒に居たかっただけです。2人はいつもこんな感じですよ?」





「「あーーー!!丹羽玲子と、蒼汰くん!!」」




「「キャ――蒼汰くーん!!サインくださーい!!」」


「「玲子さんですよね?すごーい!!スタイル良い――!!」」


辺りはいきなり、人だかりになった。その波に置いて行かれ、ぽつんと、凪は波の外れで突っ立ていた。


「「えー!!もしかしてお二人、つきあってるんですかぁ!?」


「えー…どうかなぁ?ねぇ?玲子ちゃん?」


「付き合ってないですよ?」


「えーでも、そう言うのに限って、来週あたり、週刊誌に載ってたりするんですよねー!!」


「じゃあ、バラしちゃおっか」


「…なにをですか?」


そう言いかけた時、蒼汰の顔が、玲子のくちびるに近づいてきたのだ。



その時―――…。



ドスッ!!!


「!!!!!!!!!!」


蒼汰の顔が、一気に青ざめ、脂汗が流れる。


凪が、蒼汰の〇玉を、思いっっっっっっきり蹴ったのだ。


「イッテ―――――――――――――!!!!何すんだてめぇ―――!!!」


「何すんだはおめぇだろ!!あんま調子こいてっと、今度は犬的に、噛みつくからな!!」


「そう言うことです。私の犬、狂犬病の注射打ってないんで、死にますよ?気を付けてくださいね?じゃあ、また、ドラマではよろしくお願いします」


そう言い残すと、まだ脂汗をかいて、〇かんを押さえている蒼汰を置いて、2人はニンマリしながら、映画館へ向かった。


だって、今日は、2人の、デートの日、だから。

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