第7話 解放 ーENDー
―――1年後…
「私の妻は何処だ?!」
アンダルは剣と装着用のベルトを外し、ポイッ…! ポイッ…! と放り投げるように執事に渡しながら、妻の居場所をたずねた。
愛する妻のために近衛騎士団を辞めて、東方騎士団の団長となったアンダルは、面倒な執務を副団長に押し付けて、大慌てで自宅へ帰って来たのだ。
「あ! お帰りなさい、旦那様! 今夜は帰りが早いね!」
「ただいま、アスピラル!」
長男を出産したばかりの妻を家族用の居間で見つけ、満面の笑みを浮かべてアンダルは唇にキスを落とす。
一旦、唇を離し子供ごと妻を自分のヒザに乗せると、再びアンダルは熱烈にキスをする。
「ちょっと、旦那様! もう、子供の前でダメだよぉ~!」
ぷくっ… と頬を膨らませて、妻は怒りながら、可愛らしく唇を尖らせる。
「大丈夫さアスピラル、この子はまだ、理解できないよ」
アンダルは妻に微笑む。
ひまさえあれば、夫のアンダルはこの調子で妻を可愛がるのだ。
「もう! せっかく眠ったのに、ほらぁ~ ブリンダールの可愛いおめめがパッチリ開いているよ~!」
「ああ本当だ! 悪かった… すまないブリンダール、さぁ、ねんねしなさい」
アンダルは妻が抱く、艶やかな黒髪とパッチリ開いた深緑色の瞳の美しい子供の頬にもキスを落とした。
「ふふふっ… もう~! いけない人ですね、旦那さまったら!」
妻のアスピラルは、夫の顎にキスをする。
「この子は幼い頃の、ペルデルセにそっくりだ…」
蕩けそうな甘い笑みを浮かべて、妻の耳元でそっと夫は囁く。
「そっちの名前は言ってはダメだよ、旦那様!」
妻も夫の耳元でひそひそと注意する。
ペルデルセの兄メディシナの独断で、学園時代の友人だった、エスタシオン王国のプラサ王との間で…
ペルデルセを病死に見せかけ、後宮から解放してサルド王国へ帰してくれたら、エスタシオン王国側に有益な貿易に関する契約を結ぶと、秘密裏に約束を交わしていたのだ。
薬草茶を飲み深い睡眠状態に入ったペルデルセを、エスタシオン王国まで迎えに行ったアンダルが引き取り、サルド王国まで連れ帰ると…
第二王子メディシナの指示通り、アンダルは友人の侯爵に一旦ペルデルセを預けて養子にしてもらい、ついでにその時王子の名を捨て、アスピラルに改名したのだ。
王都ではペルデルセの美貌を知らない者はいないが、地方の田舎ならば、ペルデルセの顔を知らない者の方が多い。
そこで、アンダルは近衛騎士団を迷うこと無く辞めて、領地がある東方騎士団へと入団した。
そしてめでたく結婚に至る。
― END ―
元々、違うキャラで書き始めたお話でしたが、なんか違うなぁ? と思い、役者を変えたらツルツルと不思議なほど、勢いがつき書いてしまいました。
鬱々、暗々の辛いお話でしたが、最後まで読んで下さりありがとうございます。
また、何処かでお会い出来れば幸いです☆彡
ふしだらΩ王子の嫁入り 金剛@キット @GatuGatu
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