まさかの再会。



 その後、僕は如月さんとある程度のところまで一緒に帰り、そして別れる事になった。


 ちなみにだけど、彼女が言った校門の辺りでさよならというのは、結局のところ僕をからかう為の如月さんジョークだったみたいだ。


 やっぱり遊ばれてたのかと僕はちょっと凹んだけれど、如月さんはそんな僕に対して帰り際に「またね」と言ってくれたので、まぁ良しとしようと思う。


 けど、こうして如月さんとの何気ない思い出が作れたというのは、良い機会だったんじゃないかなと僕は思う。課題は嫌だったけど、それがあったから今がある。


 またこうして一緒に帰れたりする機会があるといいけど……あっ、そうだ。今回の課題に付き添ってくれたお礼として、どこかで如月さんに何かごちそうするというのも、ありかもしれない。


 そうしたらまた如月さんと何処かに一緒に出掛けるきっかけが出来るかもしれないしね。……ただ、それで彼女が何を求めるかは分からないけど。


 この間の大判焼きや、いつかのたい焼きみたいに甘いものなのか。それとも如月さんが大好きな激辛の食べ物になるのか。まぁ、どっちにしても如月さんが喜んでくれるのなら僕はそれで満足なんだけどね。


 ……と、そんな事を考えながら、僕は遠回りした事で少し距離が伸びた帰り道を歩いていく。日が暮れた事もあって、いつの間にか街灯が点いていた。


 そうして灯りに照らされた街中を歩いていると、僕はある店の前でふと足を止めた。そこは僕が足繫く通っている中古雑貨店。この前の週末にも足を運んだ場所である。


 別にこの店に用があって止まった訳じゃないけど……なんとなくだけど足を止めてしまった。何かしらのマニア的な嗅覚が働いたとでも言うべきなのか。


「……また、何か掘り出し物が入ってるかな」


 まぁ、帰ると言ってもそこまで急いでもないし……ちょっと覗いてみるぐらい良いよね。うん、寄り道していこう。


 僕はそう結論付けて、店の中へと入っていく。中はいつも通りの中古品が並んでいて、相変わらず埃っぽい感じだった。


 そしてそんな店内を歩きつつ、僕は適当に物色をしていく。状態を確かめながら、何か面白そうな物がないか探す。


「あっ、これは持ってないやつだけど……完備品じゃないや。こっちはスクラップ品だし……」


 中古のおもちゃを色々と手に取って見つつ、眺めては戻すの繰り返し。別に買う訳じゃなくても、こうしているだけでも楽しいものだ。


 それからおもちゃ類を物色し終えると、今度は移動をしてゲームが置いてある棚に足を運ぶ。そこには懐かしいゲームから新しいゲームまで、幅広く揃えられていた。


「夏休みになれば時間もあるし、休みの間にプレイするのもいいかも」


 僕はそう呟きながら、棚に陳列されているゲームを手に取っていく。FPSやRPG、スポーツ系などジャンルは様々だ。ただ、反射神経と器用さが要求されるゲームは苦手だから、そういうのは除外する。


 中にはクソゲーコーナーなんていう、この世の終わりの様な度し難い棚も存在しているけど、これもパスする。僕はクソ映画ハンターでもクソゲーハンターでも無いので。でも、興味は惹かれるけどね。


 そんなこんなで棚を見て回りつつ色々と吟味していくと……とあるゲームのパッケージに目が留まった。そのゲームは最近発売されたばかりのRPGゲームだ。


「あっ」


 僕は思わずそんな声を上げてしまったけど、別に悪い意味ではないし、むしろ良い意味で声を上げたつもりだ。だって、このゲームは僕がプレイしたいと思っていたものだったから。


 ネットの情報とかゲーム雑誌とか、そういったものから情報を得て、このゲームが凄く面白い内容だと知ってから、ずっとやりたいと思っていたのだ。


「まぁ、如月さんと関わる様になってからは、それどころじゃなかったんだけど……」


 僕はそんな風に独り言を呟きながら、改めてそのゲームのパッケージを見つめる。できれば買って帰りたいところだけど、そうもいかない事情がある。


 生憎と今は学校帰りだから、買えるほどのお金を持ってないし、そもそもお小遣い自体に余裕がない。中古ソフトだから新品を買うよりかは安くなっているけど……それでも少し厳しい。


 ……でも、やっぱり欲しい。凄く欲しい。こうして目にしてしまった以上、やりたいという衝動が抑えられない。


「うーん……とりあえずパッケージの裏側でも見て、少し落ち着こう」


 それで落ち着く訳でも無いけれども、せめて裏側だけは確認しておきたい。そう思って僕は手を伸ばして箱を手に取ろうとして―――誰かの手と触れてしまった。


「えっ?」


「あん?」


 僕の手がその人の手に触れたのと同時に、そんな声が聞こえてきたのでそちらに顔を向ける。すると、そこには―――


「って、へ? は? いや、おま……」


 その人は驚いた様に目を大きく見開いて僕を見た。僕もその人の事を見て……そして固まってしまった。だって、僕の目の前にいたのは―――


「み、水無月さん……?」


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