一日目【目覚めた先は】

朝起きたら全く知らない別の世界にいた…。

なんてことが現実で起きるなんて誰もが思わないだろう。

私だってそんな漫画みたいなこと起こるなんて思っていなかった。


でも、本当に私は見知らぬ世界へと来てしまっていたのだ。





心地の良い温かさを感じ、私は目を開ける。


「あっ、目が覚めましたか?」


「え、あの、誰?」


勢いよく起き上がり、私は目の前の人物を観察する。

紫色の長髪を二つ結びにしていて私より背が低い小柄な少女。多分、私より年は下ぐらいだろう。


「私はテイカカズラ。みんなからはライカと呼ばれています」


「…ライカ、ちゃん。どうして私のこと膝枕してたの?」


そう、私はこの子はの膝の上に頭をのせて寝ていたのだ。

当然、そんなことしていた記憶はない。


「あぁ、貴女がこんなところで寝ていたので少しでも寝やすいようにとしていたのですが。もしかして、寝苦しかったですか?」


「え、ううん。よく寝れた…じゃなくて!そもそも、ここってどこ」


私は辺りを見回して初めて気が付いた。

ここが私の知っている場所でないことを。


「ここがどこかですか…そうですね」


ライカちゃんはゆっくりと丁寧にこの世界について説明してくれた。




ここはサクザキ村という場所で私が寝ていた場所はライカちゃんの家の庭らしい。

庭の花の手入れをしようと出てきたら私が寝ていて、膝枕する経緯になったとか。

ちなみにライカちゃんに日本について聞いてみたが、そんな場所は知らないと言われてしまった。

きっとここは地球ではあるが、よくある世界線が違うとかそんなやつなのだろう。


「あとは、能力についてですかね」


「能力?」


「はい、私は…ワープとかできますよ」


「ワープ?」


私が疑るような目で見てしまったからかライカちゃんは少し困り顔で「本当ですからね!」なんて言ってきた。

でも、そんな急に人間離れした能力なんて信じられるわけない。

ただでさえ、この世界すら本当は私の夢なんじゃないのか疑っているんだから。


「そんなに信じられないなら今から見せてあげますね」


そういうとライカちゃんは数メートル離れたところまで歩いていった。


「ここから貴女の所までワープしてみせます」


本当にワープするのか目を凝らしてみていると瞬きをした瞬間、もうライカちゃんは私の眼前にいた。


「わっ!!」


ほぼ鼻先が触れそうな距離に驚き声を情けなく上げ、尻もちをついてしまった。


「どうです?信じてくれましたか」


「あ、うん。ごめんね、疑ったりして」


「いえいえ、そんなことよりもう日が暮れますね。もし、行く当てがないなら私の家に来ませんか」


どうせこの世界に私の知り合いはいない。

そんな思いもあったし、このライカちゃんは優しそうだったから。

特に疑いもせずにそっと差し出された手を取ってしまった。


ライカちゃんは四畳半くらいの部屋を私の部屋としてくれた。

どうやらライカちゃんは一人暮らしをしているらしい。


部屋に入るとどっと疲れが押し寄せてきた。

ライカちゃんは夕飯の材料を買いに出かけていった。

そういえば私、自己紹介とか全然できてなかったな。

帰ってきたら名前とかは教えないと不便だよね。


そうこう考えているうちに買い物から帰ってきたライカちゃんが部屋の前に来た。


「ただいま帰りました。夕飯の支度が出来たら伝えるのでそれまでゆっくりしていてください」


「うん。ありがとう」


「あと、その部屋に置いてあるものは好きに使って平気ですので」


それだけ言うとライカちゃんはキッチンへ行ってしまった。

この部屋、誰かが住んでいたみたいに生活感溢れてるんだよなぁ。

もしかしてもとはライカちゃんの部屋だったりして…。


そんな部屋の隅で一つのノートを見つけた。

これは、日記帳?

中身は白紙。

買ったけど結局使わなかったのかな。


少し抵抗はあったけど私はそのノートにこの世界での出来事を書いていこうと思った。

一日の出来事を切り取って、小説風に書くと面白いかなって思ってね。


「夕飯出来ましたよ~」


「今行くね」


ライカちゃんに呼ばれ私は日記を閉じた。

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愛の重い彼女と綴る異世界日記 @ramu_03

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