第50話 ドレスコードはさくら色
淡いピンク色の桜が満開の木の下で、和装の二人が並んで写真を撮っている。羽織袴姿の岩野さんは緊張しているようだ。扇子を握る手には力が入り、笑顔も少し固い。
その横では着慣れない白無垢姿の裾を気にしながら頬をほんのり染めた
アメリカまで飛んで行った岩野さんは、
柔らかな風を受け、濃く染まったピンク色の桜の花びらがひらひらと舞い祝福をしてくれている。
「はい、撮りますよー! 新郎様、肩の力を少しぬきましょうか。新婦様、もう少し体を新郎様の方に向けれますか? あーいいですね! はい、じゃあ撮りますねー!」
カシャッ……カシャッ……。
神殿での結婚式を終え、家族だけの写真や参列者も一緒に並んで記念写真写真を撮った。みんなの幸せそうな笑顔や笑い声は、美しい桜の花びらと一緒に風に舞った。
式を終えた後、私と黒木さんは急いでお店に向かった。
『本日貸し切り』
扉に貼り紙をして、急いで準備を進めていく。TEAM180のメンバーも少しずつ集まってきて手伝ってくれている。
「黒木さん、これはこんな感じで大丈夫ですか?」
「おー、いい感じ! ありがと!」
武文と由実も綺麗な花束を抱えてやってきた。両手いっぱいの花からふんわりといい香りが広がる。
「わぁー、素敵なお花! ありがとうございます!」
「私達もお祝いしてもらったしね! 何だか懐かしいねーって話してたのよねー」
「まぁねー! はいっ、これはお店に飾るやつ!」
「ありがとうございます!」
私はテーブルに優しいピンク色のクロスをかけて、小さな花束を飾った。
店内には岩野さんと
こんがりと日焼けした岩野さんが子供たちに囲まれて嬉しそうに笑っている写真、何もない草原に沈んでゆく太陽の写真。岩野さんと
「わぁー、これ素敵ですねー!」
「ほんとだ!
「ほんとだね!」
「岩野さん、髭のびてるー!」
続々と集まってくるメンバーが手伝ってくれて、パーティーの準備は賑やかに進んでいった。
「澪ちゃん、手伝うよ!」
「助かります!」
由実や結希がキッチンの手伝いをしてくれている。いつものメニューのコロコロコロッケや卵焼きサンド、えへへスティックが大きなお皿に大量に並べられていく。
「え、唐揚げもあるの! わーい、嬉しい!」
「一つ味見してもらえます? 火は通ってると思うんですけど」
「オッケー!」
「んー、美味しい!」
由実と結希は顔を合わせて頷いている。昨日から仕込んでおいた唐揚げは大成功のようだ。玄さんの日にしか出さない少し甘めの卵焼きをたくさん焼いて、由実と結希には小さめのお握りをたくさん作ってもらった。
そして私は最後の準備に取りかかる。
『シンプルでいいんだ、料理もケーキも。特別なものでなくていいから、あたたかいパーティーにしたいんだ』
岩野さんと
そして私は卵白を泡立て、専用のミックスを使ったパンケーキをたくさん焼いた。
『幸せのパンケーキ』
ふわふわと膨らんだパンケーキにホイップクリームを添えてミントの葉を飾る。お好みでイチゴソースかチョコレートソースをかけて食べれるように用意をした。
「ハッピーウェディング!」
「おめでとうございます!」
「うわぁー、
本日の主役の二人が到着して店内は一気に賑やかになった。
歌を歌ったり、乾杯をしたり。手伝って貰って出来上がったお料理も、どんどん減っていく。
「澪ちゃん、ありがとう! とーっても美味しい!」
「この店で唐揚げが出てくるとは!」
「パンケーキ、ふわふわで美味しいよー!」
今夜のパーティーのドレスコードはピンク色だ。それぞれが好きなピンク色の物を身に付けたり、服を着ている。
黒木さんの手首には淡いピンク色の革紐がくるくると巻いてあり、私の髪の毛はさくら色のシュシュで結んである。
とても賑やかなパーティーは笑顔の花もたくさん咲いて、忘れられない夜になった。
二人の結婚パーティーはいつものメンバーにも祝福されて、窓の外には時折桜の花びらが夜風に吹かれて舞い踊り、お店の中にひらひらと舞った。
Bar180ートンエイテイー 綴。 @HOO-MII
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