謎の店と謎の美女
その日の放課後。
愁が自分の下駄箱へ向かおうとすると、廊下の曲がり角から千沙と灯が現れた。愁を待ち伏せしていたようだ。
「先輩!」
「うわ!」
反射的にのけぞってしまい、千沙と灯に間抜け面を見られてしまった。
愁達が通う高校は、昇降口手前に横切るように廊下がある。愁はその廊下に対して直角になっている廊下からやってきたため、愁から見て死角の場所に隠れていた2人に気づけなかったのだ。
「ドッキリ大成功!」
灯が頭の高さにまで上げた手を千沙が叩くと、パチンと小気味いい音が鳴った。
「……で、何の用だ?」
思ったより驚いてしまい、気恥ずかしさから頭をかきながら千沙に尋ねる。
「先輩この後時間ありますか?」
「まあ、あるけど」
「やったぁ! では、先輩との再会を祝して、カフェで優雅な放課後を過ごしませんか?」
「……まあ別にいいけど」
特に予定もないし、断る理由もない。
話がまとまり、3人が歩き出そうとしたところで黒井が現れた。黒井は校則違反をしている生徒を見つけたかのような険しい目をすると、
「神田。話がある」
声のトーンを落とし、愁を呼び出した。いかにも真面目な話を始める雰囲気だ。
「……なんだよ」
もしかして知らないうちに何か問題を起こしていたのではないだろうか。不安を感じながら黒井のもとへ歩いてくと、
「お前湊が本命じゃなかったのかよォ~?」
突然黒井は愁の肩を組み、体を揺らしながら中学生のようなノリで茶化し始めた。
「はああ!?」
真面目な話かと思いきや、野次馬根性むき出しな発言に思わず声が裏返る。
「せっかく湊と2人になれるように世話焼いてやったのに、こんな奴だとは思わなかったわ。この女泣かせがよ」
「ちっ、違うっつーの! 後輩とその友達! というかやっぱりあれわざとだったのかよ」
相手は教師だというのに、おせっかいな先輩と話しているような気分になってくる。
「まあ、確かに学園生活を楽しむなら彼女は多いに越したことはないと思うが、それにしたって純真な新一年生をたらし込むってなァ」
「だから違うっつーの。とにかく、俺はもう行くからな」
流石にその発言は教育者としてどうなんだ、と思いながら黒井の腕を振りほどき2人のもとへ戻った。
「先生さようなら」
千沙が黒井に向かって手を振る。
「おう。気をつけて帰れよ。ところで神田」
先ほどまでの下ネタで盛り上がる中学生のような表情とは打って変わって、真顔で再び愁を呼び止めた。
「……なんだよ」
嫌な予感しかしない。
「刺されるなよ」
「刺されるか!」
3人は自転車に乗り、学校近くの道を走っていた。
「先輩の担任の黒井先生でしたっけ。面白そうな先生でしたね〜」
「……まあ、傍から見ればな」
面白いというよりは、精神年齢が肉体年齢に追いついていないだけな気もするが。
事あるごとに大人たちは「社会に出たら甘くないぞ」と口を酸っぱくして言ってくる。
しかし、平気な顔をして二日酔いで出勤してくる黒井も人手不足なのかクビになっていないし、街を歩いていると「これでよくやっていけるな」と逆に感心したくなってしまう大人を見かけることも珍しくない。
実際のところ、ただ若者に対してマウントを取って気持ちよくなりたいだけで、本当は案外甘いんじゃないのだろうかと愁は常々思っていた。
3人が走っている道の左手には、平成初期、もしくはもっと前に建てられたであろう瓦屋根の民家が点々と並び、右手には川を挟んでセンターラインの無い狭い道路が走っている。愁たちの住む街にとっては珍しくない光景だ。
不意に前を走っていた千沙がブレーキをかけて止まった。目的地は自転車で20分ほど走ったところにあるショッピングモール。まだまだ先だ。
「どうした?」
「コーヒーの香りがしました」
千沙は自転車にまたがったまま辺りを見回し、犬のように鼻を動かす。
といっても辺りは民家ばかりで、カフェなんてありそうな雰囲気ではない。
「こんなところにある訳……あ、もしかしてあれか?」
ここからでは何が書いてあるかわからないが、愁の視線の先には個人経営店にありそうなA型看板が置かれていた。
「行ってみましょう!」
3人は自転車から降り、手押しでカフェ(?)に向かった。
近くに行ってみると、確かに看板にはマグカップのイラストが書かれていた。建物の外観はどう見ても古びた民家だが、古民家をリフォームした店舗なのかもしれない。
「パッと見は普通の家だけど、確かに看板があるな」
引き戸を前に、愁はすぐ横に置いてある看板に視線を移した。
『どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません』と書かれている。あまり本を読まない愁でも知っている一文だ。こんなこと書かれていたら余計入りづらい。
本をよく読む灯も当然知っているようで、
「話を知っている人間なら、これを見て『怪しい』と思うことはあっても『よし入ろう!』とはならないはずだよね。どういう意図があるんだろう」
顎に手を当てた状態で興味深そうに看板を見ている。
しかし千沙は、
「気遣いが行き届いてますね〜。きっといいお店ですよ。入りましょ!」
引き戸を開けて中へ入っていってしまった。
「おい待て、食われるぞ!」
愁も後を追って店の中に入り、灯も続く。
「……なんだこれ」
目の前に現れた光景に、愁は自分の目を疑った。
見た目は古びた民家だったが、一歩足を踏み入れると木目調のカフェのような空間が広がっていた。2階をくり抜いたのか天井が高く、視覚効果で広く感じる。そのおかげか、異空間に迷い込んだかのような感覚を抱く。
しかし室内に並んでいたのは、カフェには似つかわしくない、博物館にあるような展示ケースだった。もちろん中は空ではなく、壺や何に使うか分からないアンティーク雑貨、そして剥製など、複数のジャンルの博物館を無理やりこの空間に押し込めたかのようだ。
だがここは博物館ではなかった。どれも値札がついていたからだ。
とはいえ、売り物だとは分かっていても、ついどんなものがあるか気になってしまうのは人間の性だ。3人は展示ケースの前に立ち、商品を眺めはじめた。
「これが100万? 嘘だろ?」
愁の視線の先には、ただ適当に絵の具を塗りつけたような模様が描かれた皿があった。値札には1,000,000円(税抜)と書かれている。
「これ近所の幼稚園に頼んでも似たようなものできそうだね」
「いや、でもきっと分かる人には分かる何かがあるんだよ」
そんな事を口々に言っていると、
「あら、珍しいお客さんね」
若い女性の声が聞こえ、3人同時に声の方向を向く。
そこには金髪青目の女性が立っていた。ロングワンピースを身に着け、髪の毛は腰に届くほどの長髪だ。目を細めて笑みを浮かべているが、こんな場所にいるせいか、きれいと感じる前に何だか胡散臭さを感じてしまう。
突如現れた金髪美女に、愁の思考回路は凍りついてしまった。
こういうときなんと話すべきなのだろう。最初の1単語目すら思いつかないし、そもそも英語なんて話せない。しかし、沈黙していても怪しまれるだけだ。とりあえず挨拶をして友好的な態度を見せるのが無難だろう。
「ハ、ハロー」
「私さっき日本語で言ったでしょ」
愁が日本語発音で挨拶をすると、声だけでは日本人が喋っているとしか思えない流暢な日本語でのツッコミが飛んできた。
「に、日本語上手いんですね」
「上手いも何も、私こんな見た目だけどハーフだし戸籍上は完全に日本人よ?」
謎の金髪美女が金糸を思わせる髪の毛を払う。
「金髪って遺伝するんだっけ?」と思いながらも「ここって何の店なんでしょう?」と3人全員が思っていたであろう疑問を愁が代表してぶつけると、
「そうねえ……私のホビーショップ……かしら」
謎の金髪美女は店内を見渡しながら、自分に問いかけるように答えた。『ホビーショップ』の部分だけ妙に流暢だ。
「あの! コーヒーの看板があったのでこの店に入ったんですけど……もしかして間違ってましたか?」
千沙が一歩前に踏み出し、金髪美女へ近寄る。
「あってるわよ。ほら」
指差した先には、カフェというよりも昔ながらの喫茶店を思わせる、4人が並んで座れるカウンターがあった。このような店にあるだけあって、椅子もなかなかいい値段をしていそうだ。
「わあ、なんかいい雰囲気ですね」
軽い足取りで歩いていく千沙に、2人が続く。
3人揃って慎重に椅子に座ると、
「私は丸田レイラ。あなた達は?」
金髪美女はカウンターの反対側に回り、レイラと名乗った。
「俺は、神田愁……です」
「私は若宮千沙です!」
「湊灯……です」
順々に自分の名前を名乗ると、
「シュウにチサにアカリ。モダンなグッドネームね。初めてだし、おまかせでいいかしら? もちろん高校生に法外な金額は請求したりしないから安心して頂戴」
レイラは目を細めて微笑む。
きっと深い意味はないのだろうが、場の空気のせいか「大人だったらぼったくる」と取れそうな気がしないでもない発言が飛び出す。
「は、はい、大丈夫です」
流石にここまで来てやっぱりいいですとは言える雰囲気ではない。愁はレイラを信じて頷くと、横に座る千沙と灯をちらりと見る。
コーヒーが出てくるのが楽しみなのか、頭を左右に揺らしてごきげんそうな千沙に対し、灯は表情が固い。
レイラが目の前でコーヒーマシンを動かし始め、しばらくして3人分のコーヒーが出てきた。どれも予めミルクと砂糖が入っている。
香りは良かったが、味はどうだろう。恐る恐る一口コーヒーを口に運ぶと、
「……うまい」
思わず礼賛が口から漏れていた。コーヒーの香りもさることながら、ミルクが後から入れる添加物ではなく、『ミルクを入れて初めて完成』と言えるほど馴染んでいた。
千沙と灯も同意見のようで、驚いた目でマグカップに入ったコーヒーを見つめている。
「どう、美味しいでしょ?」
レイラは腰に両手を当て、得意げに胸を張ると、
「……決めました」
急に千沙が思いつめたように呟いた。
「どうした?」
何事かと思い尋ねると、
「私、この店の常連になります! 行きつけの店って憧れてたんですよね〜」
先ほどの態度とは打って変わって、のんきな表情でヘラヘラする千沙。
「あら、うれしいわね。これサービス。みんなで食べて」
レイラはクッキーが入った小皿を3人の前に置いた。
「わっ、ありがとうございます!」
迷う様子を見せることなく、千沙はクッキーを頬張りはじめた。
最初はレイラを怪しんでいた愁だったが、徐々に警戒を解き始めていた。得体の知れないところがあるが、悪い人ではなさそうだ。
愁は気になったことをレイラに聞いてみることにした。
「……丸田さんはいつからこの店を?」
「レイラでいいわよ。多分まだ半年も経ってないかしらね。床とかまだ真新しいでしょう?」
「そうですね」
確かに床や壁は真新しいが、果たして利益を出せているのか疑問だった。
近所の商店街ではIターン・Uターンの支援を行っているが、成果はイマイチなようで、新しい店ができたと思いきや、気がつけばシャッターが降りっぱなしになっていることもざらだ。
支援を受けている店でもそうなのだから、こんな客層が限られていそうな店ではなおさらだろう。
愁がそんなことを考えていると、引き戸が開き、誰かが入ってきた。
「おや、珍しく若いお客さんですね」
声の主は30手前と思しき男だった。黒いジャケットに黒いシャツ、スラックスも黒で靴も黒。癖っ毛で、前髪で目が隠れているが、隙間からかろうじて見える左目は只者ではない威光を覗かせている。
「壮(そう)といいます」
3人の横に立ち、渋みのある声で名乗った男は、口元に笑みを浮かべた。言葉遣いは丁寧だったが、大型爬虫類を思わせるような威圧感があった。
3人も本日2回目の自己紹介を壮に返す。
「レイラさん、この前頼んだものは入ってきていますか?」
「もちろん。ちょっと待っててね」
レイラは店の奥にあるドアを開けて中に入ると、みかん箱くらいの大きさの箱を持って戻ってきた。
愁達のいる場所から3メートルほど離れたところに設置してある机の上に箱を置き、ゆっくりと開けると、
「ほう……」
中身を覗いた壮はため息を漏らし、顎に手を触れた。
「いいでしょこれ」
「ええ」
レイラと壮は見つめ合い意味ありげに笑う。怪しすぎる。
このコーヒーも何かヤバいものが入ってるんじゃないだろうか。心配になってきた愁は、もう空に近くなったマグカップに視線を落とす。
「あ、もちろん法に触れるものは売ってないから安心していいわよ」
心を読んだかのように、愁に顔を向けレイラが言う。しかしそんなフォローを入れられても、怪しさは中和されたりはしなかった。
店を出た3人はそのまま帰路についた。途中別方向の灯と別れ、愁と千沙の2人になる。
「今日は楽しかったですね~」
並んで自転車で住宅街を走りながら千沙が言う。
「まあ、そうだな」
千沙と再会したり、灯は詩音の妹だったり、謎の店を見つけたり。確かに新鮮な1日だった。
「先輩。この後もう少し付き合ってもらえますか?」
「いいけど」
徐々に日が長くなりつつあり、まだ外は明るい。少しくらいなら問題ないだろう。
「じゃあ、行きましょうか」
「おう」
千沙は別方向に走り始め、愁も続く。
まだ若干肌寒く感じることもあるが、体を動かすと汗をかいてくる。悩ましい季節だ。
愁の住む市は県内で2番目の人口を誇る、県の中核を担う街だ。市街地はそれなりに栄えてはいるものの、都会と比べると大人と子供のケンカになってしまう。
市内にある国道と国道の交差点が印象的で、山側に続く道へ視線を向けると、遠くにそびえる山々は、この街がこれ以上大きくなれないよう見張っているようで、海へ続く別方向に視線を向けると山はなく建物も少ないため空が広く見え、その先には何もないかのような印象を与える。
愁達は山側の道を走り続けて市街地を突っ切り、街外れに来ていた。
「どこまでいくんだ?」
愁が前を走る千沙に向かって尋ねると、
「このあたりでいいですかね」
千沙はブレーキをかけ、自転車から降りた。愁も続き千沙の横に立つ。
視界に入るのは点々とある民家、そして畑、田んぼ、草むらに古びた農具。遠くには日に青さを増していく山々が見える。なにか特別なものはない。この風景の写真を加工して「40年前の写真です」と言い張っても余裕で信じてもらえそうだ。
「ここに何かあるのか?」
後ろで手を組み、山を見上げる千沙に尋ねる。
「この辺、小学生の頃に一緒に来ましたよね」
「ああ……そういえば」
覚えている。確かに幼い頃冒険と称してこのあたりまで千沙と来たことがあった。
当時はこの辺りに来るのですら文字通り大冒険で、これ以上遠くへは心細くて行こうとは思えなかったことも記憶に残っている。地図上では隣の市との境界線はもっと先だが、「ここから先は町の外だ!」とか勝手に言っていた気もする。
「……あの頃は今と比べてこの街が何倍も広く見えましたよね」
千沙は遠くを見つめながら目を細める。
「そうだな」
愁も同感だった。子供の頃は市内のショッピングセンターに連れてってもらうだけでもワクワクしていた気がするが、今となっては心躍るような場所でもない。
相変わらず自分の住むこの街は好きだが、世の中をある程度知ってしまった今、この街は心躍る場所ではなくなっていた。
辺りは徐々に暗くなり始めていた。頭上には山の後ろに隠れようとする太陽が見える。
「……昔ここで先輩が言ったこと覚えてますか?」
「……うーん」
腕を組み、お互いを『千沙』『愁くん』と呼んでいたころの記憶をたどる。
何か話していたような気はする。しかしその部分だけ水でぼやけてしまった文字のように不明瞭だ。
「思い出せないな」と答えた瞬間、千沙の表情が曇ったような気がした。
「まあ、そうですよね。じゃあ、そろそろ帰りましょうか」
しかしそれは一瞬のことで、人懐っこい笑みに変わっていた。
もしかしたら勘違いだったのかもしれない。だが、そのせいか同時に笑みで寂しさを隠しているようにも見えた。とはいえ、千沙に確認してまで明らかにすべきことでもないだろう。
「それより何か用があったんじゃないのか?」
ただ街の外れまで来て、そのまま帰る。具体的に何かしたわけでもない。解せない行動で、今はこっちのほうが気になっていた。
「いえ、十分目的は果たせましたから」
どこで目的を果たせたのか愁には分からなかったが、うかうかしているとあっという間に暗くなってしまう。女の子を暗くなってまで連れ回すのは褒められた行動ではない。今回は連れ回すというより、連れ回されているのだが。
2人は自転車にまたがり、来た道を戻り始めた。
愁が自宅の前にたどり着くとすでに家には明かりがついており、それを見た瞬間、愁は顔をしかめていた。今日は遅くなると言っていたはずなのに……。
この市では珍しくない赤い瓦屋根の日本家屋の引き戸を引き、家に上がる。
「……姉さんただいま」
リビングでは愁の姉、神田優子(かんだゆうこ)(24歳)が缶ビールを手に顔を赤くしていた。普段は長い黒髪をまとめ、年下の男の子の性癖に修復不能な影響を与えてしまいそうな笑顔がチャームポイントの女性なのだが。
「しゅーく〜ん。遅くなるなら連絡するって約束でしょぉー!」
缶ビールの底をテーブルに叩きつけ、愁に怒鳴りつけてきた。
優子は酒癖が悪く、酔っ払ってしまうとキャラが完全に崩壊してしまうのだ。解いた髪の毛はボサボサ、着ているシャツの胸元はだらしなく開いてしまっていた。
「いや、心配し過ぎだって! 遅くなったっていってもまだ8時にもなってないんだからさ」
「あーあー、昔はお姉ちゃんにべったりだったのに、今は遅くなるの一言すら面倒って寂しいなあ……家族ってなんなのかなあ。大人にはなりたくなかったなあ。ずっと子供でいたかったなあ……」
優子は一口ビールを飲むとため息をついた。
いつから飲み始めているのか分からないが、こうなってしまうと、もうこちらが折れる以外に取れる手段はない。
「あー、はいはい、分かったよ。分かった。遅くなりそうなときは必ず連絡します! これでいいだろ」
ため息をつきたいのはこっちの方だった。
「ホントに?」
「ホント」
「しゅーくん好きぃー」
優子は立ち上がると、愁に抱きついてきた。酒臭い。
「分かった分かった! だから離れてくれ!」
絡みついてくる優子を引き剥がす。
酔っ払うとうざったいこの上ない姉だが、忙しい両親に代わって優子は愁の面倒を見てくれている。
今も両親は家を空けがちで、実質優子とのふたり暮らしだ。だから感謝しているし、優子のことは好きだ。酒癖の悪さくらい、余裕で目をつぶれる。
「はぁ〜恩着せがましいからこんなことは言いたくないけどぉ、減るもんじゃないんだから、仕事でヘトヘトになって帰ってきたお姉ちゃんを、もう少し労ってくれてもいいと思うんだけど……ぷはぁ〜」
優子は椅子に再び座ると、残りのビールを一気に煽る。
前言撤回。やはりもう少し酒癖が悪くなければ。
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