11・逆風を掴め 陸 戦国帆船考察 其之四
と、言う事で帆について大凡纏めた所でどの帆を採用するかと言う話になるのだが。まず横帆か縦帆で言えば、これはもう言うまでもなく縦帆一択だ。
当面の目標である曽杜湊への航路は半円状に双回山を回り込む形になるから風向きが一定だとしても片道で最低三方向からの風を受ける事になるからだが、そもそもそれ以前に風に向かって走って見せると約束してしまっているので選択の余地がそもそも無い。
※資料 帆船概説④:縦帆船様々
https://kakuyomu.jp/users/24zm/news/16818093088807948224
では、縦帆の中で何を採用するかと言う話になると高性能と言われるもののジャンク帆は除外せざるを得ない。なぜならばバテンと呼ばれる骨の入った帆の使い方が分からないからだ。
残りはラテンセイルかその発展形、またはクラブクロウセイルとなる訳だが、後者は帆単体の性能としてはラテンセイルに勝ると言う話も聞いた事がある。それに帆の面積が縦帆の中でもとりわけ狭い事も特徴だろう。
帆が小さいと言う事は風を受けられる風が少ないと言う事なので速度面で不利になりそうだが、そこが実用的な範囲で収まるのであれば逆に言えば帆に使用する材料が少なくて済む。莚以外の帆の導入難易度が下がると言う事なのでクラブクロウセイルで解決するのが最も良い結果となるかもしれない。但し、将来的に船を大型化する際に足枷になるかもしれない。
一方の西洋系の縦帆の中では、ラテンセイルではなく発展形のガフセイル、又は最終形態とも言えるバミューダ帆走(バミューダセイルと呼ばれないのは船首のジブとの組み合わせが前提だからだろうか?だが、一人乗りのディンギーにはジブは装備されていないのだが…)が候補になるだろう。
ラテンセイルはまずラグセイルに改良されたとされる。誰かが閃いたらしいのだ。「あれ、ラテンセイルの前の小さい三角形の部分って必要か?」と。結果は無くても問題無い、だったようだ。
ラテンセイルとラグセイルは帆桁が帆柱の横に据え付けらえる形になる。これは例えばマストの左側に据え付けている場合で考えると、右側から風を受けた場合は帆が左側に綺麗に膨らむが、左側から風を受けた場合は右側に帆が膨らむので帆の途中がマストにぶつかって綺麗に膨らまない。これでは帆の効率が下がるのでこれを解消するには一々ヤードをマストから降ろして逆側に付け替える、もしくは効率の低下には目を瞑ってそのまま運用すると言う事になる訳だ。
これを解消したのガフセイルで、これはスパンカーやドライバー等と別名の多い帆でもあるが、これはガフと呼ばれる斜めのヤードをマストの後ろ側に装着する事で帆をどちらの方向にもマストに干渉せずに向けられるようにした物だ。また、ガフセイルは下側の帆桁であるブームを持つ事も前二つの帆との大きな違いである。
このガフセイルが現代でも変わらず西洋式の帆船に装備される縦帆なのだが、更に後年に小型の帆走ヨット等では斜めのガフを廃し、鋭角の三角形型の帆を装備するのがバミューダ帆走(マルコーニ帆走)である。帆走ヨットと言われて想像するのはこれだろう。
この二つのもう一つの利点は帆を甲板に近い下端に位置するブームに畳めると言う点であって、帆の開閉に、都度高いヤードに登ったり、重いヤードの上げ下げをしなくて良いと言う事は、操作に必要な労力、つまり人数の削減に直結する為、運用上の大きな利点となる。
最後にステイスルについても軽く触れておこうと思う。ステイスルは前支索に張られる三角形の帆で、縦帆の一種に数えられるが、それ単体で使用すると言うよりかは他の帆の補助する役目の帆である。大型帆船の写真を見るとマストとマストの間に小さな三角形の帆が縦に2~3枚張られているのが見られる事だろう。
中でもマストから船首甲板(ないしは船首から前へ突き出すように取り付けられるバウスプリットと呼ばれる棒)に伸びるステイに張られるステイスルをジブと呼ぶ。ヨット等ではマストに張る三角帆に近い大型の三角帆を張る事も多く、縦帆船では非常に重要な装備になっている。
と言う事で、現状では帆は性能に問題がなければクラブクロウセイル、駄目ならバミューダ帆走。どちらにしても船首にはジブを装備と言う事にしようと思う。
※※※
やっと帆の話が終わりました。船体の話はここまで長くならないと思いますので上手く行けば次回で説明は終わるかなと思います。
もし、ここ意味が分からんと言う所があれば感想に書いておいて頂ければ補足します。
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