10・逆風を掴め 伍 戦国帆船考察 其之三 帆の種類と選定
お待たせしております。一時非公開にしておりました前二話を含めまして構成から完全に作り直しました。非常に労力が掛かっておりますので是非そちらから読み返して頂けると幸いです(と言うか、構成が変わってしまっているので今回の内容は修正前の前回の内容に綺麗に繋がっておりません…)
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次にセイルの種類の話になる。セイルは大まかに機能、固定する場所に関して二つに分類出来る。
機能的に区別すると
この内、後者の一つ、
横帆とはその形から
大型船であれば縦に何枚も連ねて張るこれは、アル〇ォートのチョコに書いてある船のやつと言えば分かって貰えるだろうか?
但し、縦帆にも四角い帆は存在するので四角い帆=横帆ではない事には注意だ。
その名が示す通り進行方向に対して横向きに張る帆であって、基本位置は船の中心線に対して90°。そこからヤードを傾けて両舷45°程度旋回出来ると思われる。それ以上は前述の通りサイドステイに干渉すると思われるのだが、横帆船に乗った事が無いので詳細は分からない。
その特徴は帆の面積が広く、追い風を受けて走る事を得意としている点だろう。
欠点は帆が大きく縦帆に比して操帆に人手が必要な点。そして風上に向かって走る際に帆がバタついて綺麗に膨らんだ形を維持し難い、つまり揚力が安定して得られない点と言える。
運用法としては安定した風が吹き、帆を操作する機会の少ない外洋航行に向いている。
縦帆は進行方向に対して縦向きに張るセイルであって、基本位置は船の中心線に沿っている。ここまでの話を聞いたなら、その向きにセイルを張ったら前に進めないじゃないかと思うかもしれないが、それは全くその通り。そこからヤードを傾けて両舷90°程度の範囲で適切な角度に旋回させて使用する。
横帆はスクエアセイル一択であるが、縦帆は様々な種類がある。主立った物では、西洋帆船や、インド洋のダウ船に使われる
また、
特徴は横帆に比して面積が狭く、操作が容易な点、それから風に向かって走る時にセイルの形が安定し易い点だろう。
逆に欠点はセイルの面積が狭い為に受けられる風の量が少なく、速度に劣る点だろう。
運用法としては、風向きが変わりやすくセイルを操作する機会の多い沿岸航行に向いている。
※資料 帆船概説②:横帆と縦帆 【帆桁と帆の展開範囲】
https://kakuyomu.jp/users/24zm/news/16818093088599097793
因みに、西洋帆船はマスト毎に横帆と縦帆を並用する事が多く(後年には一本のマストの上下に両方装着したりもする。)、ジャンクや航海カヌーはマストが増えても同じ形の縦帆を複数使用する。
では和船はと言えば、和船は頑なに長年一本マストに一枚帆の形式を守り続けているし、そもそも和船の帆が横帆なのか縦帆なのかはっきりしないから困りものなのだ。
長年、後ろから風を受けるだけしか機能しない低性能の横帆と言われていたが、近年では高性能の縦帆の様にも扱えるのではないかとの反論もなされている。
だが、この議論には根本的に大きな問題が有る。それはこれらの議論の的になっている船は江戸時代の弁才船(菱垣廻船や樽廻船、北前船等を含む)についての議論なのだ。
弁才船江戸時代の平和の中で経済の発展と供に生まれた船だ。最大の特徴は木綿製の帆であった。
海外では当然の様に使われていたこれは、戦国時代末期に軍船に取り入れられられたが、当時は輸入品であった木綿を商船に使う事はコスト的に問題が有るのは目に見えており、国産化が進んだ江戸時代に入って製法、使用方の研究が進んだ末に生み出されたのが弁才船なのだ。
それ以前はどうしていたかと言うと、この間五作とも話た通りに莚を帆としていた。はっきり言って西洋や中国から見れば太古の技術である。
その特徴は硬く靭やかさが無い為に帆の膨らみを作り難い、目が粗いのでそのから風が逃げてしまい帆の前後の気圧差が保ち難いと言う点だろうか。後は重い?
良い所は無いのかと言いたくなるが、コストが安いくらいの物だろうか。
尤も、これは前世の日本での話であって、この世界でそのまま当て嵌まるかは一考の余地があるが、実際に何度か乗った船で目にした事から推測するに大きな違いは無さそうだと感じている。
しかも、この世界の船は、と言うか莚帆は低性能で逆風に弱い。それ故に北敷の連中も風に向かって走る船なんてものが作れるならば従おうと考えたのだろうと思う。
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瑞雲高く〜戦国時代風異世界転生記〜資料集
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