第7夢 桜の木 Ⅱ
「くー、……っは」
「あっ、おはよ」
「そっか夢かぁー」
「夢だと決めつけるのが早いわ、夢だけど」
その場から体を起こす。
地面に寝ていたというのに、体が不思議と痛くない。
「で、死亡フラグ回避って……」
「あ、ごめん。もう今回は時間ないや」
「へ?」
そう言われた途端、桜の木の近くの湖っぽい所に落とされる。
「え、ちょま」
「まぁ、頑張れ~」
ボチャン!
水の中でも意識は途切れず、息も出来る。
だが、いくら足掻いても上には浮上しない。
ただただ、底に沈んでいくだけ……。
目を瞑って、考える。
まだ私って、生きてるのかな……。
そんなことを考えながら、私は水の中へと誘われ沈んでいったのであった。
***
目蓋を閉じていても分かるほどに、少し眩しい……。
「ん……」
体が気だるい。
それでも私は意識を覚醒させようとする。
始めに目を開けてみよう。
ゆっくりと目を開く。
「……ん、眩し」
目を開くと、横には見覚えのある女性がすやすやと眠っていた。
「…………湊、華?」
そう呼ぶと湊華は目を覚まし、私が起きていることに驚いていた。
「奏!?起きたの?」
「え、あ、うん」
「……かった」
「ん?」
「良かったよぉ、奏ぇ」
いきなり湊華は私に抱き付いてきた。
「え、どうしたの」
「だってぇ、奏ぇ、ずっと目を覚まさないんだもん。もう奏が眠ってから3年が過ぎたんだよぉー」
わあぁーん、と泣く湊華のその姿は何処か幼い子供に見えた。
手を湊華の背中に回す。
にしても3年ということは、私は20歳か。
もう成人してしまった……。
にしても此処は何処だろう。
黒を貴重とした家具、窓の外には大きな赤い月見えて、まるで魔界みたいだ。
「湊華、ここっ」
「魔界の魔王城だよ」
考えていることをすぐに読み取ってくれたのか、即答してくれた。
魔界……魔族達が住んでいる異界で、人間に干渉をせずに暮らしている所。
「……、魔王城?」
「そ!魔王城よ~」
湊華はすっかりいつもの調子を取り戻したようで、口調が戻っている。
「なんで、魔王城に?」
「それは……」
湊華が言葉を発しようとした瞬間、部屋の扉が勢いよく開く。
「……目が覚めたか、奏」
「もしかして……冬宵、なの?」
冬宵は嬉しそうに私の元へ駆け寄ってきて、私を優しく抱き締める。
私も手を冬宵の背中に回し、抱き締める。
「良かった、目を覚ましてくれて……。本当に、良かったぁ……」
たかが3年だろうに……。
それでも二人が心配してくれたことはとても嬉しかった。
「2人とも、ありがとう」
そう言って私は2人と3年後に再会したのであった。
夢の桜が散る頃に 春戯時:-) @ira2BH
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