アディダスのショーツ

「あっ!いらっしゃいませ~」

あわてて言いなおした。


「これ、ください~」

って男の子は、うちにアディダスのショーツを手渡した。

「はいっ!ありがとうございます」


「今日は仕事は何時に終わりますか?」

「えっと...9時くらいには...」

「じゃあ、9時に、1階の入り口のあたりで待ってます」


仕事を終えて、9時に1階の入り口に行ったら、男の子は待っててくれていた。

男の子は、近くのお好み焼き屋さんに連れて行ってくれた。

いつも、かえっちといっしょによく行く、同じお好み焼き屋さんだった。

「ここ、美味しいんだよ~」

「うんっ!知ってるよ!先輩とよく来てるから」

「えーっ?そうやったんや~」


☆☆☆☆☆


ボクはロンドンで生まれた。

ママとパパは、ママの働いていた梅田の百貨店の下着売り場で偶然出会って、それからふたりは結婚した。

結婚式はママの地元のニースで。

そのまま新婚旅行でフランス周遊の旅。

パパも神戸の大学を卒業して、それから就職した。

ロンドン勤務になって、ロンドンでふたりで暮らしていた。そして、その時に、ボクは生まれた。

テムズ川沿いの家。

パパはロンドンで働きながら、美術系の学校にも通って学んでいる。ママも同じ学校でいっしょに学んでいる。

だから、家の中には、ママとパパの創作しているアート作品、いっぱい置かれてあって、ボクはいつも、その間のベビーベッドで寝ている。


☆☆☆☆☆


ボクは、フランスの可愛い女の子を、お好み焼き屋さんに誘ってみた。

そしたら、その子も、先輩とよく来るお店だったらしい。

その子の話す関西弁めっちゃ可愛い。

世界でいちばん可愛い関西弁かもしれへん。

声も、めちゃめちゃ可愛い。


お好み焼き屋さんの席についてから、ボクは女の子に自己紹介をした。

「ボクの名前は、あやめ。文女と書いて、あやめ。日本の花の名前から、つけてもらった」

女の子はリオちゃん。ニース生まれのニース育ちらしい。


「アディダスの下着、めっちゃ似合いそうですね!」

って、お好み焼きを食べながら、リオちゃんに言われた。

「うんっ!めっちゃ似合ってるよ~!自分で着けてても、そう思う...」

「あははは、なんか、わかる...」

「今から、見てみる?」

「えっ?」


お好み焼き屋さんを出てから、近くのちっちゃな可愛いホテルにいっしょに泊まった。


ボクの着けてるアディダスのショーツをリオちゃんに見せた。

「うわっ!今日うちのはいてるやつと、おんなじやんっ」

って言って、リオちゃんも、自分の着けてるショーツを見せてくれた。

「うわーっ!まったくいっしょやんか~」

「おそろいですね~」


それから、ふたりで、ショーツを脱いだ。

朝になって、交換して、はいた。まったく同じショーツだったけど。


京都行きの同じ電車に乗って帰った。

リオちゃんは京都まで乗ってた。

ボクは京都の手前で降りて帰った。


☆☆☆☆☆


四条河原町の駅に着いて、下宿先に戻った。

部屋で、ひとりでアディダスのショーツ姿になった。

「同じショーツだったの笑える」

って、ひとりで思った。

「交換してはいたのも笑える」

って思って、ひとりで笑ってしまった。

「おんなじのはいてるのって、いいな~」


それからデートの時も、いつもふたり同じのを着けてる。

結婚してからも、ずっと、いつも...








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あやめっちとリオちゃん ヤッキムン @yakkimn

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