第20話 それから

「おはようございますエドガーさん!」

「ああメアリーさん、おはようございます」


 あれから何とかジョージを説得し、私たちは再び平穏な日常を手にした。

 しかし変わったこともある。それは……


「おはよーございます! エドガーせんせい! メアリーせんせい!」

「はい、おはようございます!」

「皆さんおはようございます」


 結局ジョージに押し切られ孤児院をやらされることになった。それもアルバート王国の王都で一等地にある建物を改築し、国王のお墨付きの元で運営される国立の孤児院だ。子どもたちはアルバート王国の関わる戦争で行き場を失った国内外を問わない戦争孤児である。

 メアリーは私と一緒に孤児院の運営を手伝ってくれている。


「あっ! ぐれいさんだ! ぐれいさーん!」

「……わ、……や、やめろ……! ……ボス……助けて……」

「こらこら、尻尾を引っ張ってはいけませんよ」


 グレイは相変わらずふらっと何処かに出掛け、たまにこうして顔を見せに会いに来てくれる。子どもたちとも遊んでくれ、獣人と触れ合う貴重な機会を与えてくれるのはありがたい。


「ねぇエドガーせんせい」

「おや、なんですか?」


 一人の小さな女の子が私のズボンを掴み、話しかけてきた。


「なんできのう、メアリーせんせいは、エドガーせんせいの、おへやでねてたの?」

「──あわわわわ! そ、それはね!」


 メアリーは慌てて女の子の口を塞ごうとした。私はメアリーの肩に手を置きそれを止める。


「それは昨日遅くまで、皆さんへのプレゼントを考えていたからですよ」

「わぁ、プレゼントってなに!?」

「孤児院には誕生日が分からない子も沢山います。ですので、明日をその子たち皆の新しい誕生日ということにして、パーティをする予定なのです」

「やったー! たのしみ!」

「はい、楽しみにしていてくださいね。……それと、これはサプライズのつもりなので、他の子たちには言ったらダメですよ?」

「わかった! やくそく!」

「ありがとうございます」


 女の子は疑うこともなく、走って人だかりができているグレイの方へ遊びに行った。


「た、助かりましたエドガーさん……」

「……メアリーさん。もう少し、気を付けないといけませんね」

「はい……気をつけます…………」








 ジョージは本当に資金だけを出し、私に軍師としての役目を求めることはしなかった。時折孤児院を訪ねに来るが、私の顔を見るとすぐに帰っていく。噂では王として前よりも随分と優しい施政を始めたそうだ。

 その一つの例として、アルバート王国はあの村とマーシアには十分な金銭的補償をし、前より豊かになったとベンから手紙が届いた。


 皆、自分たちのすべきこと、生きるべき場所を見つけている。


 こうして私たちの、奇妙で、そして幸福に満ちた第二の人生が幕を開けたのだった。





──────────了──────────



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 皆様、最後までお付き合い頂きありがとうございました。皆様の心に何か少しでも残すことができていたのなら幸いです。

 この作品は第30回電撃小説大賞に応募中の小説となります。皆様の感想やレビューでの応援を心よりお待ちしております。


 本当にありがとうございました!

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天才軍師、国を去る〜第二の人生は辺境で少女と共にスローライフを〜 駄作ハル @dasakuharu

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