桜の上の空

綴。

第1話 桜

 桜が満開になる頃。

 私は可愛いいおばぁちゃんを思い出す。


 昔働いていた喫茶店のお客様。

 帰る時は手を握って、階段を降りてお見送りをしていた。


 喫茶店を辞めてからも桜の咲く頃、会いに行っていた。

「おばぁちゃん、お誕生日おめでとう!」

 大きな声で、耳元で言うとにっこりと笑ってくれるのだ。




 どんぐりが道端にコロコロと落ちる季節。



「お姉ちゃん、お母さんがそろそろらしいのよ……。来れたら会いに来てあげて」

と娘さんから連絡をもらい会いに行った。


 100歳のお祝いの銀盃が届いていた。


「これもってー!」

と私はおばぁちゃんにお願いすると、手に持って微笑んでくれた。

 私はピースをして、おばぁちゃんと一緒に写真を撮った。



 その翌日、おばぁちゃんは眠るようにお空の虹を渡って行った。



「家族だけだから、お姉ちゃん来てね!」

 私は急いで撮ったばかりの写真をプリントアウトして喪服に着替えて会いに行った。



 大好きなお菓子と、お気に入りのお洋服、私と並んだ写真も一緒に持って。


 おばぁちゃんは、煙になって空へと登って行った。


「お姉ちゃんの事が大好きだったのよ。」

と言われ、小さくて白くなってしまったおばぁちゃんを集めながら私は泣いた。



 桜の咲く頃、私はいつもおばぁちゃんを思い出す。


 私は今、桜が満開の道を車で走っている。


 助手席には、紫色のカンパニュラをのせて。


 花言葉は【感謝】【誠実な愛】。


 今日はおばぁちゃんのお誕生日だ。


 桜の花の上には青空が広がっている。








―― 一話完結です ――

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桜の上の空 綴。 @HOO-MII

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